【R18】【ごちゃまぜ裏夢✿短編集】今夜はOKかもしれない。
第38章 呪術廻戦✿七海健人「夜の蝶」
目の前にいるのは本物だろうか。
生きた霊…ではないだろうか。
「七海くん……だよね?」
ハッキリと自分を呼ぶ声。
サングラスで目元が隠れているからはどこか不安げだ。
こんなに胸を騒がせることができるのはしかいない。
散々自分がさせてきたの寂しがる顔。
「……虎杖くん。五分ほど時間をください」
「応ッ」
一歩一歩踏みしめて進むと、の顔に交差するネオンの光。
黒服の下には黒と赤のオフショルダータイトドレス。
髪型も巻いた髪の上でセットしたハーフアップ。
少しだけ体形がほっそりしたように見える。
後ろに立つ頭ひとつ分抜けた堅実そうな若い男はに向かって、親しげに口を開いた。
「彼は…?」
「私の知り合いよ。七海くん、元気そうで良かった。なんだがこの辺、騒がしくなっちゃって…」
「不躾で失礼。五分ほど彼女をお借りします」
「えっ。七海く──」
七海はの手を掴んで人混みを抜ける。
ひと気のない路地へと連れ込み、全身で強く抱き締めた。
「──貴女が無事でよかった……ッ」
全身で感じるのぬくもり。
震え続けた怯えた手足。
が何もかも笑顔で誤魔化そうとした。
時が経っても七海はの強がりにすぐ気付いた。
込み上がる感情を抑え込むのは限界があった。
もはやが震えているのか、自分が震えているのかさえ分からなかった。
ずっと会いたかった。
ずっと抱きしめたかった。
自分の本当の気持ちに気付いて後悔が込み上げた。
のぬくもりを確かめるように何度も何度も強く抱き締めた。
「よかった………」
目頭が熱くなるのをグッと堪える。
今はこのぬくもりを離したくない。
「──…海、く……く……るしっぃ…ッ」
「!……」
悶えた声が胸のあいだから漏れ腕の力を弱める。
腕の中にいる着飾ったをみてホッとしたのも束の間。
七海は時間がないことを思い出した。
「あの男は誰ですか?」
真っ先に出た質問に嫉妬心が強く滲んだ。