【R18】【ごちゃまぜ裏夢✿短編集】今夜はOKかもしれない。
第38章 呪術廻戦✿七海健人「夜の蝶」
「あ。ちょっと待ってください」
「?」
用が済んで帰ろうとしたを七海は引き止めた。
大きめの紙袋から出してお店の紙袋を手渡した。
「日頃の感謝の気持ちです。受け取ってください」
シンプルに気持ちを伝えた。
色々考えたがくどくどいうのは好きじゃなかった。
誕生日を祝いたい気持ちもあるが日頃の感謝が一番大きかった。
は大きく目を見開いて動揺を隠せない状態だった。
お盆を落としそうになってギュッと指先に力が入っている。
迷惑だっただろうかと不安になった。
振られた男からのプレゼント。
は何を想うのか。
考えなかったわけじゃなかった。
「………ぁりがとぅ」
はそっと手を伸ばして受け取った。
のヒンヤリとした指先。
かすったわけでもないのに全身がカッと熱くなる。
自分が温めた体を思い出して。
固く結んだ指先を思い出して。
愛し合った時間を思い出して。
小さくお礼をいったは後ろ姿をみせて歩き出す。
これでいい。
白い蝶のことは言うべきではないと思った。
あれもこれもすべて。
想い出のなかに。
* * *
「──……はい。……はい。分かりました。今すぐそちらに向かいます」
携帯を耳から離すと七海はフーッと長い息を吐いた。
舌打ちが出そうになった。
こういう日に限って猪野琢真は出張任務。
両面宿儺の器・虎杖悠仁は拳で呪霊を祓い終え、戻ってきたところだった。
「どうったの?また呼び出し?」
「君を早く家に帰したかったんですが…」
「どうせ帰ったって映画三昧だからな。場所はこっから近いの?」
七海は最強呪術師・五条悟の頼まれ、虎杖の引率代理を任されていた。
辺りはもう月明かりが見える頃。
腕時計で時間を確認すると二十時過ぎ。
七海はよりいっそう眉間の皺を深くさせた。
「銀座の高級クラブです。死者・重軽傷者をあわせて30人以上。情報によるとニ級相当が三体いるそうです。いささか未成年の君には相応しくない場所ですが……」
「だとしても俺も行くぜ。足手まといにはならんからな」
「急ぎましょう」
七海と虎杖は夜の街へと急行した。