【R18】【ごちゃまぜ裏夢✿短編集】今夜はOKかもしれない。
第38章 呪術廻戦✿七海健人「夜の蝶」
七海は仕事が終わった後、息抜きをするために街に出た。
何件か飲み屋の前を通ったのに足が向かない。
ここへ来たのは酒を飲みに来たはず。
「…………」
どこも煌びやかなのに自然と目が行った。
女性用の服飾が並ぶショーウインドウ。
光り輝く宝石の中に黒い蝶が一頭。
なぜかそれだけが黒かった。
七海はなにかに呼ばれた気がして扉のベルを鳴らした。
「いらっしゃいませー。なにかお探しですか?」
店員に話し掛けられ朧げな意識が戻った。
何に呼ばれたのかは分からない。
ここに入ったのはほぼ無意識。
七海はショーウインドウの裏側を目にやった。
「あそこに……黒い蝶が一頭だけみえて。少し気になったんです」
「ああ!それは店長が置いてくれたんです。飾りつけは殆ど私がしたんですけど、なんか物足りないなぁ~って。そしたら店長がぽんって置いてくれて!」
「なぜです?」
黒い蝶は不吉・死をイメージさせる。
なのにあえて店の前に並べてしまうという発想。
それにこの店員もあの黒い蝶を気に入っているような口振りだ。
「私も黒い蝶はネガティブなイメージしか持ってなかったんです。BLEACH(死神)世代だったので。そしたら店長は黒い蝶は不幸や不運を"運んでくる"んじゃなくて、迫ってきていることを知らせてくれるって教えてくれたんです。なるほどですよね~」
七海はもう一度、黒い蝶に目を向けた。
の後ろ姿を想い重ねて。
「すみません。あの黒い蝶のバレッタ、プレゼント用に包んで頂けませんか?」
「彼女さんにプレゼントですか?はいっ、かしこまりましたー!」
ちょっと図々しい店員だと思いつつ財布を出す。
本当はあの白い蝶を返すべきなのだろう。
なにか思い入れがある品かもしれない。
けれど失いたくなかった。
どこまでも未練たらしい。
「ありがとうございましたーっ!」
店員の明るい声。
扉を出たときもベルが鳴る。
彼女の誕生日は…来週、だったか。