【R18】【ごちゃまぜ裏夢✿短編集】今夜はOKかもしれない。
第38章 呪術廻戦✿七海健人「夜の蝶」
すべては七海が望んだ結果だった。
こんなにも呆気なく終わるものかと無性に寂しくもなる。
そんなある日。がセクハラ行為で訴えてもおかしくない下心丸出しのバツイチ上司から誕生日に何がほしい?と自販機前で迫られていた。
「もう来週でしょう?なにか欲しいのないの?なかったらディナーでもどう?彼氏いないんでしょ?」
「え、えぇっと……」
ハッキリと迷惑だと断ればいいものを。
は最近、メイクを抑えたせいで妙な連中が増えてきた。
ああそうか。
派手な化粧は男を誘惑するものではなく欺くためのものだった。
自分が指摘したばかりに…。
いや、それとも他に狙う男が?
「この前だって俺がフォローしなかったらヤバかっただろ?だからお前はいつまで経っても一人で仕事ができないから──「すみません。退けてください」
「えっ?」
七海は目を細めてしつこい上司を見下ろした。
殺気に似たものを感じた上司は「ひッ」と小さな声を漏らし腰を引く。
恫喝さながらの逃げっぷりだ。
七海は何事もなかったようにポケットに手を突っ込み、自販機に硬貨を入れた。
「ぁ……ありがとう、七海くん」
「いえ。私は缶コーヒーが飲みたかっただけです」
深い意味はなにもない。
あのクソ上司を呪ってやろうだとか。
の肩に触れた手首を捻り潰してやろうだとか。
なにも思っちゃいない。
「でも、助かったのは本当だから…」
「貴女の態度がハッキリしないからあの男もつけあがるんです。あの人のことを思うなら注意すればいいですし、ストレスを感じるなら距離を置けばいい。それくらい貴女にならできるはずだ」
「………」
少しきつく言い過ぎたか。
に当たってどうする。
これじゃあ嫉妬している子供と同じ。
「うん…そうだね。少し距離置いてみるよ。七海くんも疲れてる顔してるけど、ちゃんと息抜きしてよね。それじゃあ午後も程ほどに頑張ってね」
「………クソッ」
が過ぎ去った後、自販機にバンッと手をつき、額を押し当てる。
これはすべて自分が望んだ形。
なのにどうして。
どうしてこんなに胸が苦しくなるんだ。