【R18】【ごちゃまぜ裏夢✿短編集】今夜はOKかもしれない。
第38章 呪術廻戦✿七海健人「夜の蝶」
は同僚だが異性としても認識している。
馴れ馴れしいタメ口だが性格は悪くない。
顔もそれなりにいい。
仕事の手際や要領もそこそこ。
そのほか、抱き心地が良さそうな体…
とにかく総合して憎たらしい女なのだ。
「別に嫌いになってもらって構いません。金輪際あなたのような女性と飲む機会はないでしょうから」
はやくネクタイを離してくれないだろうか。
支えた腕を離すことができない。
腕を離せば首を持っていかれる。
首の筋力だけでこの女の体重を支えられる自信がない。
「離してください。私は早く家に帰りたいんです」
家に帰って、スーツの手入れをしなければ。
何となく買った観葉植物に水やりをしなければ。
明日の燃える日のゴミも纏めなければならなかった。
ほかにやる事はいくらでもある。
「離してください」
七海はあくまで変わらない低さで言った。
それが少し強めに響けばいいと思いながら。
「……家に…飼い猫でもいるの…?」
ネクタイから手を離し、ようやく自分の足で立った。
は視線を落として聞いてきた。
「いえ。動物も観賞魚も飼っていません」
「ならどうしてそんなに早く帰りたがるの…?」
「それは」
家に帰ってもやることは沢山あるはずだった。
あるはずなのにすぐ答えられなかった。
やましいことがあるわけじゃない。
隠しごとがあるわけじゃない。
家に帰って、休息をとるのも重要なはず。
「ねぇ…七海く「私は家に帰って眠りたいんです」
酒臭い息を嗅がされて酔いがうつった。
それで思考が鈍ってしまった。
だから返答するのも遅れてしまっただけ。
「あのね、七海くん」
「聞こえなかったんですか。貴女といたら私は静かに眠れない」
「まだ……一緒にいたいの。駄目?」
「っ…」
やはり酒のせいで頭が可笑しくなっている。
正常ではない。
この女が…がいつも以上に艶っぽく見える。
「七海くん……だめ?」