【R18】【ごちゃまぜ裏夢✿短編集】今夜はOKかもしれない。
第38章 呪術廻戦✿七海健人「夜の蝶」
一般企業にサラリーマンとして勤めていた頃、七海健人は同僚であり非術師の女性社員と一度だけ気の迷いで寝たことがあった。
きっかけは…アルコールだった。
「少しは自力で立とうとしてください。重たいです。こっちに寄り掛からないでください、鬱陶しい」
「なによぉ…。いいじゃない少しくらいー」
「酒臭い…」
夜の街。
ざわざわと主張の激しい街灯。
すれ違う人と衝突を避けるようにの腰を抱え、肩を貸して歩く姿は七海自身、みっともないと思った。
七海はのしつこい誘いを断っていた。
同僚だからとなんだというのだ。
仲良くするメリットがない。
クライアントでもない。
そこに金が生まれるわけでもない。
との付き合いに利益は全く感じられなかった。
…なのに。
ただでさえ仕事で疲れ切っているのに。
今日だけはいいかと酒の席に付き合ってしまった。
「まったく…いい歳した醜態だ」
一度だけならと許してしまった。
仕事で失敗したわけじゃない。
落ち込むことがあったわけじゃない。
敢えて言うならそこそこ大きな取引を一件、無事やり終えただけ。
家に帰って早く自分のベッドで眠りたい。
その前にシャワーを浴びなければ。
このままでは無駄に時間だけが費やされていく。
ようやくひと段落したのに。
ようやくクソ残業から解放されたのに。
なぜこの酔っ払いの酔い覚ましにまで付き合わされなければならないのだ。
七海は自分の要領の悪さを呪った。
「いまで500メートル歩きました。あとは自分でタクシー拾ってください。それでは」
大道路まで歩いてきて、七海は肩にまわるの腕を外そうとした。
が、この女はまだ七海を帰したくないらしい。
「嫌いになること、言わないでよ……」
ネクタイを掴んだはそう言った。
懇願する目を向けてきて。
ざわざわと…、腹の虫が騒がしくなった。