【R18】【ごちゃまぜ裏夢✿短編集】今夜はOKかもしれない。
第35章 ハイキュー✿北信介「ちゃんと、隣りに。」
祖母はうちで食べて行ってもええよと誘ったが、は遠慮して帰ると鞄を持ち上げた。
「車使うとええ。遠慮せんでな」
「あ、すみません。ではお言葉に甘えて」
祖母は「また遊びに来てな」とお土産を押し付けて、は父の運転する軽バンの助手席に座った。また明日学校でね、と見えなくなるまで車の中で手を振ってくれるを乗せた車。どんどん遠くなって、光る赤いランプも見えなくなった。
「ええ子やな」
「ええ子やろ。俺、あの子が好きや」
何度も思ってることだけど改めて思った。あんな男にを取られなくて良かった。自分が幸せにしてやりたい。自分が笑顔にしてやりたい。友情に裏切られて、好きな人に振られて深く傷ついているだろうけど、自分の方に振り向かせたい。改めてそう思った。
「ばあちゃん。俺、頑張る。さんにちゃんと好きって言えるように」
「応援してるで。信ちゃん、頑張ってな」
「ありがとう」
──と同じクラスになって早3ヵ月。そろそろかと思ったが、隣りのクラスが席替えしたとかでうちのクラスもお見合いしたいとホームルームの時間で持ちあがった。
くじ引きか、あみだくじか、自由に決めるか。多数決をとって決めることになり、信介はどちらにしても気が進まなかった。
「もう離れてしまうんか。……寂しくなるな」
この前、うちで誕生日を祝ってもらったのにあっという間の幸せだった。多数決の結果、文句なしのくじ引きに決定した。順番はいつものように席の端っこがじゃんけんして進む方向になった。信介はぽつりと呟くと、は一瞬驚いた顔をして小さく笑った。
「席が離れても北くんともっとお話ししたい。できたらお昼ご飯も一緒に……」
「俺も大賛成や。席が離れても変わらんよな」
転校して離れ離れになるわけじゃない。席が離れても同じ教室にいる。今まで通りお喋りして、たまに祖母のところ来てくれてお茶会して、今日からお昼ご飯も一緒に食べる。最高やん。
の言葉に救われるように信介は笑顔を零した。