【R18】【ごちゃまぜ裏夢✿短編集】今夜はOKかもしれない。
第35章 ハイキュー✿北信介「ちゃんと、隣りに。」
信介が気付いてから間もなく、男と女があの雨の日のように肩を並べて昼休みの廊下を歩いていた。休み明けだった。
の態度が朝から妙によそよそしく、目が赤く腫れていたからずっと気になっていた。聞きたくても無神経なことはできず、現実を目の当たりにして呆気なく友情は崩壊したのだと痛感した。
「さん。これ」
「?」
「鼻づまりに効く飴や」
信介は気にしない素振りができなくて、鞄にあったハッカ飴をあげた。もっといろんな言葉をかけてやりたかったが、正直なところなにを言うのも傷を広げるんじゃないかって。
「明日はもっとええもんやる」
「……どうしたの? 急に」
でも言わずにはいられなかった。余計なことかも知れないと思った。
──俺はちゃんと見とるよ。困らせるのは分かっていたけど今ここで伝えなきゃならないと思った。
辛かっただろう、悲しかっただろう、いっぱい泣いて、顔見せるの悩んで、負けずに学校に登校して、ほんまは強くてえらい子やからほっとけなかった。
「美味しいもん食って元気になってほしいんや」
の悲しい顔みてるのは辛かった。は大切な友達も大好きな人も同時に失った。こんなに近くに居るのに、傍観して何もしようとしない自分に腹が立った。想い続けてることが格好良いのか。困らせないことが誠意なのかって。
本当は一番、自分が傷付くのが怖かった。の気持ちを一番に考えてたんじゃなく、自分が一番臆病だった。だから自分から近付くこともせず、遠くから応援することを選んだ。
同じクラスになって、隣りの席になって、挨拶して、お互いのこと話して、共通点探して、話せば話すほど止められなくなった。もっとと仲良くなりたくて、何かしてやりたい、助けになりたい、守ってあげたい。自分のエゴを押し通してるだけかも知れないが、信介はそうするべきだと判断した。
気持ちに踏ん切り付けようと一度は応援したけど、好きって気持ちはどうしようも隠せなかった。恋情、友情、ただの同級生でも俺がそばにいる、どんな時でも味方だよって言葉と態度で伝えたかった。
「……ありがとう」
は飴玉を口にして鼻をすすった。