【R18】【ごちゃまぜ裏夢✿短編集】今夜はOKかもしれない。
第35章 ハイキュー✿北信介「ちゃんと、隣りに。」
の存在を意識しはじめたのは多分、9月の体育祭のとき。クラス対抗で1年生の玉入れ競争があった。
真ん中でカゴを持った目立ちたがりな男子がいて、チームの枠の中に散らばった70個の黄色い玉。開始前に玉に触れてはいけないルールだが、手の届く範囲の玉を拾い集めたり、唯一枠の内側にいるカゴを持った男子がバレないように外側に玉を転がしたりしている。周りがやっているから右へならえだ。クラスを勝たせたい先生も一緒になって、もはやルールは当然のことならが存在しないうちに号砲が鳴った。
玉入れが一斉にはじまり、カゴに向かってあらゆる方向に飛び交う黄色い玉。信介は枠の外側に転がってきた玉を誰かが拾いやすい場所に戻す働きをしていた。
役割分担は特に決めていないが信介は夢中で玉を投げ込むより、はじめから支援に徹すると決めていた動きだった。玉入れに自信がない人たちも途中で気付き、信介に習って玉を内側に戻した。おかげで信介のクラスだけは枠の外が綺麗に掃除されているようだった。
飛び交う玉も残り少なくなり、自分の下に向かって大きく飛んできた黄色い玉。勝利目前なのにまだ遊び足りない奴がいるらしい。信介はクルっと方向転換して玉を追いかけようとしたが、足元に水色の鉢巻をした小柄な体があってギョッとした。
「あっ、ごめんなさ──」
黄色い玉がの額めがけてポコッと落ちた。彼女は玉拾いに夢中で信介の近くにいたことに気付かなかったのだろう。彼女も驚いたように平謝りをした直後、木の実でも降ってきたように可愛らしい効果音が鳴ったように見えてしまった。
「うちのがすまん。大丈夫か?」
「うん。はいこれっ」
は自分が集めていた玉を地面に置き、黄色い玉を両手で渡してきた。この行動にも信介はまた驚いた。
「ありがとう。そっちも頑張って」
「あっ、うん」
黄色い玉を手渡してはハッとした。自分の行動にようやく気付いたのだろう。彼女は急いで水色の玉をかき集め、チームの輪へ走り去っていく。
このときはじめて信介はという女子を認識した。信介のクラスが制限時間内に制覇してから、信介はちょこまか動き回るを無意識に観察していた。そこから多分、のことを追うようになった出会いだった。