【R18】【ごちゃまぜ裏夢✿短編集】今夜はOKかもしれない。
第35章 ハイキュー✿北信介「ちゃんと、隣りに。」
昇降口前でアランの用が済むのを待っていると、気になる男女が肩を並べて歩いてきた。あれはがずっと追いかけている男と、もうひとりはとよく一緒にいた女子だ。会話の内容は雨音とガラス越しの扉のせいで聞こえないが、表情から推測して、この土砂降り具合に同じ顔をしているあたり男女の仲が良さそうに感じられる。
当然、の気持ちを知る信介の雲行きが怪しくなった。そうとも知らず二人が外に出てきた。
「うわー。改めて外出るとホンマすごい」
「これじゃあ傘役に立たんやろ。その傘しか持ってへんの?」
「その傘って持ってきてない人に言われとうないねん」
「そう言わんといて。おまえんち駅まで行くんなら俺んちまで走らへん?」
「ええの?」
「カバン持っちゃる。ちょっと走れば5分でつく」
「ちょっとって、あんたの足と比べて──もぉっ! 待ってってば。置いてかないでよ~」
水溜まりも気にせず足を踏み出して、先に走る男とそれを追いかける女の姿。濡れることが嫌で校舎で雨宿りしていたのではないのか。事実、二人は別れを惜しんで、雨が弱まらなかったのを理由に口実を引き延ばした。
友達はの気持ちを知っているはずだ。があの男の顔を見るとき、恋する乙女の顔をしていた。友達なら気付かないはずがない。なのにどうして男の家に行く? なぜ断らない? 男の気持ちはさておき、それはを裏切ったことに当てはまらないんだろうか。
「俺ってやっぱ重いんかな」
「体重増えたん?俺にはそうは見えへんけど」
アランがベストタイミングで帰ってきた。うわごとを聞かれて少々気まずかった。なんでもない、と応えればアランは思い出したように別の話題に変えてくれる。
信介は年齢と比例して彼女が出来たことがなかった。何度か小さな恋心が芽生えてもそれまでだったし、水や肥料をあげてどうにか必死に実らそうと、ちゃんと自分の気持ちに向き合った覚えがなかった。しかし、いまの信介は知らずのうちにという異性に対して自然に目で追うようになっていた。