【R18】【ごちゃまぜ裏夢✿短編集】今夜はOKかもしれない。
第31章 名探偵コナン✿服部平次「先生へ」
それから間もなく、先生を特別意識するようになった。
1学年の担任と2学年の生徒。
学校の中じゃお互いの接点なんてなくて、会えるのは水泳部の部室のみ。職員室に行けば会えるかもしれないけど大した用もない。先生に特別だと想ってもらいたいのに、近付き方を間違えたら避けられてしまうのではないかと思い、「好き」という想いを伝えられなくて…。
気付いたら冬を越し、春を迎え、夏が過ぎて、また秋がきた。
「……おまえさ。最近、俺に愛想悪くね?」
「そんなことないです」
「反抗期か」
「違います」
「進路のストレス?」
「それは多少ありますけど違います」
「ちゃんと飯食ってない」
「三度三度食べてます」
「運動不足」
「毎日片道30分歩いてます」
「俺寝不足なんだけど」
「先生のことなんて知りません」
「ほら。言ったそばから俺のことになると塩対応」
「…」
「ムスッとしてたら可愛くねえぞ」
「もともと可愛くないんで…別に良いです」
拗ねた返事を続けてたら先生も厭きれて黙ってしまった。
そこは嘘でも「可愛い」って言ってもらいたかったのに、沈黙なんてひど過ぎる。子供は無責任で大人は嘘つきなんだから、叶わない夢や希望を想わせてくれるだけでも良いのに…。
「はあ…。せっかく応募したチケット当たったのに、俺一人じゃ行けねえしなぁ…」
「チケットって、なんのチケットですか…?」
「観覧車」
「…なんで、相手もいないのに応募したんですか…」
「誘おうと思ってた相手が無愛想になっちまって、先生もどうしていいのか分かりませーん」
「…」
たばこの白い煙を吐きながら、ちらっと流し目を向けてきた姿にドキッとしてしまう。まるで自分に指を差されているかのようで…、先生に特別意識されてるんじゃないかって都合のいい妄想が膨らんでしまう。
「……俺とさ、付き合ってくんね?」
「えっ!?」
「観覧車」
「…観…覧車…」
「そ。学校以外でおまえとどっか遊びに行きたい」
「っ…」
にやりと笑う先生はズルい顔をする。
互いの立場を分かっていて好きだって伝えられないのに、淡い期待を想わせるようなデートのお誘いに逆らえるはずもなかった。