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【R18】【ごちゃまぜ裏夢✿短編集】今夜はOKかもしれない。

第31章 名探偵コナン✿服部平次「先生へ」


高校2年の秋。
父親の仕事都合で大阪に移り住むことになった。

知らない土地。
慣れない話し声。
家に帰っても誰も話し相手がいなくて、転校前の学校で仲良くしていた友達とのLINEにしがみ付く日々。

戻りたい、帰りたい、寂しい。

友達は頑張って友達作りなよと応援してくれるが、あのキツイもの言いの中に溶けこむ勇気はない。修学旅行で来たことがあっても、それは仲の良い友達がいたからこそ楽しめた。でも、今は違う。

どこにいても一人ぼっち。

(…学校やめたい…)

授業中はまだマシだけど、空いた休み時間は教室にいるのがしんどくて、どこか静かで安げる場所がないかと学校中をしらみつぶしに徘徊する。

トイレはあり得ない…。

図書室は静かだけど人の目がある…。

そこで見つけたのが渡り廊下の先にある、今や使われていない枯れ葉だらけの水泳プールの屋根の下。部室は鍵が締まってて入れなかったけど、屋根さえあれば雨の日でもお弁当は食べられる。

「大阪って、雪降るのかな…」

紅葉色めく秋の時期とはいえど、気温が低いときは薄っすらと白い息も出るようになってきた。かじかんだ指先を温め、冷たいお弁当をゆっくりと流し込む。

水筒に手を伸ばしたとき、サンダルを履いた若い男がこちらをじっと見ていた。

「…おまえ…、2年か…?」

「…!?」

独特の訛りもない標準語を話す若い男は、違う制服を着ている私の学年をピタリと当ててきた。先生は、1年半前にこの大阪に赴任してきた1年の担任だと自己紹介してきた。

それが先生との出逢い。

「外寒ぃだろ。部屋んなかで吸おうぜ」

「私はたばこなんて吸いません…!!」

「元気あんじゃねえか。その声聞けてひとまず安心だ」

「…え?」

先生は部室の鍵を開け、にやりと笑う。

「俺も、話し相手欲しかったところなんだ。浮いたモン同士、仲良くしようぜ…?」

それから先生は毎日この場所へ来てくれて、くだらない愚痴や悩みを聞いてくれたり、面白い話やためになる話をしてくれたり、学校に来る目的と居場所を与えてくれた唯一無二の人となった。
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