【R18】【ごちゃまぜ裏夢✿短編集】今夜はOKかもしれない。
第22章 僕のヒーローアカデミア✿治崎廻「愛してる、だけじゃ伝わらない
部屋に案内すると、少女は大きな瞳をパチクリさせていた。その表情をみる限り不服そうなものではない。柔軟で前向きな思考の持ち主なんだと、治崎はリアクションから読み取った。
「……昼になったら食事を運んでやる。アレルギーや苦手な食べ物はあるか?」
「…い、いえ…」
「ようやく喋ったな」
「ッ」
「口を押えても手遅れだ。好きな食べ物は?」
「………」
「約束は出来んが、答えられるリクエストならいずれ叶えてやろう。何もないということはないだろう…?」
「…」
少女は困惑した顔つきになった。次々と質問してやったら、恐怖や驚きとかそういうのではなくて、遠慮……といった感情が垣間見える。
「教えたくなったら聞かせてくれ。時間はたっぷりある。あァ、それと採血をとらせてほしい」
「えっ?…」
「病院でもやるだろう…?危ない薬を投与するんじゃない。そこのベッドに座ってくれ」
「………」
途端に少女の顔色が曇った。大人しくベッドまで歩いて行ったが、その足は見るからに重たげだ。鞄のなかに入れていた注射針やスピッツを準備して、手袋も替える。
「アルコール消毒で肌が荒れたりは?」
「だ、大丈夫です……」
「針を刺すから動くなよ。じっとしていろ」
「…」
拒絶や警戒されると思ったが、少女は抵抗した意志も示さず採血に応じ、妙なやつだと感じてしまう。
薄い手袋ごしに初めて少女の肌に触れる。他人に触れようと思っただけでも蕁麻疹が出るというのに発症はなく、針を通して赤い血がスピッツの中に溜まっていく。
「……手は痺れてないか?」
「大丈夫…です…」
「二本とる。致死量じゃない。安心しろ」
触れているところに蕁麻疹が出ないどころか、手袋を外してみたいという自分らしくない探求心が湧く。マスクを外してもいいんじゃないか…。胸に抱いてもいいんじゃないか…と。
(いや駄目だ。検査結果が出るまで我慢しないと…)