【R18】【ごちゃまぜ裏夢✿短編集】今夜はOKかもしれない。
第22章 僕のヒーローアカデミア✿治崎廻「愛してる、だけじゃ伝わらない
「………今日はゆっくり休むといい。きみの住む部屋を準備したんだ。案内しよう」
しばらく何もできず沈黙を守っていると、治崎は準備した部屋に案内すると提案してきた。
(…私の…部屋…?)
住む、という表現に若干の違和感を覚える。つまりはすぐ殺されるわけではない。うちはごく普通の一般家庭だし身代金もたかが知れてる。誘拐された目的は一体なんなのか…。頭の中で考えてみるも、自分の身体がバラバラになっていくことしか想像できない希望の薄さ。
「…自力で立ち上がれないのか?安心しろ…。男たちも誰もいないただの一人部屋だ。…それともまだ、此処に居たいのか?」
(そんなわけ…ッ。あれ?……膝に力が)
沈着を装っていても、身体は目に見えてガクガクと震えていることに気付かされる。自分の置かされている立場に涙が出そうになったけど、ここで泣いてしまっては相手の反感を買うかもしれない。女はすぐ泣く弱い生き物なんだと思わせたくなくて、ぐっと足腰に踏ん張りを言い聞かせる。
「ついて来い」
治崎の足運びは割とゆっくりで少々イラついてしまう。自分の部屋があるというのなら一刻も早くそこに逃げたい。どうせ幽閉されるのだろうけど、一人で冷静になる時間がほしいと思ったからだ。
(ここは複雑な地下室だと仮定しよう。地上からどれだけ離れているかも分からない場所…)
地元の広い山道の土地勘はあるが、この同じに作られたコンクリートの地下室になにか法則はないかと目線を配る。治崎の視線は前を向いている。
(なにか、何か掴めれば脱出…)
「…あァ、そうだ。部屋に入る前にお風呂に入ろう」
「ッ!?」
この男は重度の潔癖症だと口にしていた。自分は見た目ほど汚れてはいないが、変な汗をかいてしまったのは事実。クサイと思われるほど、匂ってしまったのだろうかと内心焦る。
風呂場に案内され、治崎は服や備品に関して説明し、質問がないと分かればすぐ脱衣所から出て行ってしまった。
「…はあ。とりあえずお風呂入ろ……」
折角、自分のために用意してくれたのだ。入試会場に着ていくはずだったセーラー服を畳み、袋に入れる。きっとその他の手荷物も処分されてしまっているだろう。
あの人たちにとって何もかも、不要なものなのだから。