【R18】【ごちゃまぜ裏夢✿短編集】今夜はOKかもしれない。
第22章 僕のヒーローアカデミア✿治崎廻「愛してる、だけじゃ伝わらない
………雄英入試当日。
ホテルを出る前に両親にメールを打った。仕事中のパパからは既読の文字はなかったけれど、ママからは「悔いのないようにやって来なさい!」と応援メッセージと絵文字付きスタンプが送られてきた。
「うんっ、忘れものナシ!」
入試が終わったらすぐ地元に帰るチケットをもう買ってしまっている。パパとママも一人で遠出するのはすごく心配されたけど、もし雄英に入学が決まったら学生寮で暮らすことは必然で、パパとママから離れるのも同然。だから巣立ちの予行演習として初めて一人で新幹線に乗ってきたのだ。
「バスの時間まで30分もあるし、この時間だったら学校着いてからも余裕だな」
ホテルインよりも緊張しなかったチェックアウトの手続きも無事に終え、ホテルから少し離れたバス停へ向かう。その道中、物陰から物騒な奴らが現れた。
「無駄な抵抗はするな。とはいってももう意識はねェか」
「若頭に連絡だ。傷付けねえように運べよ。俺らが消されちまう」
「………、」
それが、薄れゆく意識の中で聞こえた最後の会話だった。気付いたときには青空の下ではなく、上も下もコンクリートの壁で出来た部屋。全員、奇妙なくちばし付きのペストマスクをつけており、意識が戻ったのことを見下ろしていた。
「ようやくお目覚めか。起きなかったら水をぶっかけるところだったぜ」
「乱暴な真似はよせ。とっとと起こして応接室に連れて行きやがれ!キエエエエ!」
「オラ。立ちやがれ」
「えっ、…な…に…」
ここは何処。
あなたたちは誰。
小人のぬいぐるみが猿叫している。
ただひとつ分かることは、命の危機を肌身で感じているということ。無理やり大きい人に立たされると手錠を嵌められていることに気が付き、ほとんど何も分かっていない状態で、何度も同じところを歩かされてるような廊下を進む。
(…ここは、地下…??)
窓もない、太陽の光もない、風もない。感じるのは蛍光灯の明かりと人工的な空調のみ。空と海と大地とともに暮らしてきたにとって其処は、とても違和感の感じる場所だった。