【R18】【ごちゃまぜ裏夢✿短編集】今夜はOKかもしれない。
第22章 僕のヒーローアカデミア✿治崎廻「愛してる、だけじゃ伝わらない
治崎はあえて恐怖や暴力による手段を使わず、少女の反発を待っていたのだが完全なだんまり状態。強張った面持ちでソファーに腰をかけ、赤くなった手首を指でそっと抑えている。
(…潰してやろうと思ったが、病人志望のわりには重症ではないらしい…。まあ、今はそんなことはどうでもいい。これでは埒が明かない。ひとつ…、やることだけやっておくか)
「………今日はゆっくり休むといい。きみの住む部屋を準備したんだ。案内しよう」
「…っ、……」
しかし少女はすぐ立とうとしなかった。ソファーに座ったまま動こうとしない。
「…自力で立ち上がれないのか?安心しろ…。男たちも誰もいないただの一人部屋だ。…それともまだ、此処に居たいのか?」
「…、……」
そう告げると少女は震える手を膝におき、自力で身体を動かした。若気の至りといった無鉄砲な発言や行動する様子などなく、従順そのもの。
………まだ暴力を振るうには値しない。
「ついて来い」
静かな廊下。迷路のように入り組んだ造りをゆっくりとした小幅で歩き、後ろから大人しくついてきている少女を横目で確認する。
(………この歳の小娘は、自分が拉致されたと気付いた時、一体なにを考えているのだ。…金銭、…売買、…殺傷。まさか俺の野望のために連れてこられたとは思うまい)
「…あァ、そうだ。部屋に入る前にお風呂に入ろう」
「ッ!?」
「俺が重度の潔癖症だと言ったこと、まさか忘れたわけではあるまいな」
「…」
部屋に閉じ込める前に、あらゆる汚れを洗い流さなければ。玄野に準備させた風呂場に案内する。
「身につけているものはすべて、この袋に入れてくれ。もう必要ないからな。お風呂で身体を隅々まで洗ったら、この服に着替えるんだ。ドライヤーもあるから髪を乾かしても良い。化粧水も気に入ったものがあったらすべて使っても構わない。終わったらこれで連絡してくれ。俺が迎えに行くから。なにか質問は……?」
「………」
「質問がないのなら俺は出て行く」
「…、」
少女は少しだけ口を開きかけたが閉ざしてしまう。
少なくとも混乱、恐怖が入り乱れて、言葉にする余裕もないのだろう。泣きわめかないだけマシだと思い、治崎は部屋を後にしたのだった。