【R18】【ごちゃまぜ裏夢✿短編集】今夜はOKかもしれない。
第22章 僕のヒーローアカデミア✿治崎廻「愛してる、だけじゃ伝わらない
時がきて、雄英高校の一般入試当日。
少女の動向を見張っていた部下の連絡により、宿泊していたホテルは把握済。表立って動けない治崎は部下に仕事を任せ、無意識に時計の針を見上げる。
「廻。いつになく落ち着きがないようですが」
「………ほかの連中には言うなよ。示しがつかない」
「期待外れの娘であると嬉しいんですがねェ」
「クロノ…。喧嘩売ってんのか?」
「いえいえ。幼馴染としてなんだか寂しいなぁと思いやして」
「誰でも良いお前と一緒にしないでくれ」
若頭補佐である玄野は治崎の様子をみて、クスッと親しげな笑い声をたてる。そう間もなくして現場にいた部下から連絡が入り、難なく拉致できたとのことだ。
そして、いよいよ対面のとき。
地下室にある応接室。手首に手錠をかけられた少女が姿を現した。
(………あァ、この子が)
「はじめまして。乱暴な真似をしてすまなかった。手錠は外していい。そこに掛けてくれ」
「………」
部下によってソファーに座らされた少女に挨拶をすると一瞬だけ視線が交わった。しかし、その顔は恐怖に怯えてすぐ伏せてしまい、頑なに口を一つに結んでしまっている。
「俺の名は、死穢八斎會の若頭・治崎廻。俺はきみの声を聞いてみたい。なにも焦る必要はない。心の準備が整ったら、きみの名前を聞かせてほしい」
「………」
牽制するのではなく、できるだけ穏やかなしゃべり方を試みた。少女はまた視線を動かしたところ、口元にあるマスクに目を向け、確認し終えるとまた俯いてしまう。
「あァ……、このマスクはとある事情で外せないんだ。俺は重度の潔癖症でね。汚い仕事をする人間と同じ空気を吸いたくないから、生きていく上で必要不可欠なんだ。少しずつでいいから俺のことも理解してほしい」
「………」
「……若。無理やり喋らせますか?私の個性なら」
「この子の前で口を開くな。この子は当分、俺以外の声を拾ってはいけない。消されたくなかったら人形のように黙っていろ」
「ッ…」
それは返事も同意、というべきか。治崎の冷たい視線をあびた音本は、忠義を尽くし、マスクの下でぐっとその口を閉ざした。