【R18】【ごちゃまぜ裏夢✿短編集】今夜はOKかもしれない。
第16章 ハイキュー✿黒尾鉄朗「アイワナビー」
人通りの多いネオン街に潰されないように半歩手前をゆっくりと歩幅し、ざわざわと街の音が二人の沈黙の場を埋めている。
「………あそこの喫茶店入らねえか?個室だからゆっくりできる」
は小さく「うん」と返事をして、空いている個室に通してもらう。適当にメニューを頼んでに話し掛けた。
「……髪…、伸びたな」
「え?……あぁうん。あれから2年経ったからねえ。クロは相変わらずの寝癖だね」
「今日は一応セットしてきたんだぜ?」
コーチのために切ったショートボブヘアは姿を消し、以前のように長い黒髪が歳月を表すかのように伸びている。当たり障りのない話をしているとが急に謝り出す。
「……ごめんね。あの時、急に連絡切ったりして…」
「まあ今更だし。気にしてねぇけど」
──…嘘。すげえ気になってる。
は一旦置いてからポツリポツリと話し始めた。
「こんな話されてもって感じなんだけど、高校入学してしばらく経った時…」
の話はこうだ。
父親が不倫していたことが母親にバレて家庭崩壊。怒った母はひとり実家に帰ってしまい、父は定期的にお金を置いて家に戻るだけではずっとあのマンションで一人で住んでいた。
それを聞いた黒尾は思わず絶句する。
高校を卒業してから両親は正式に離婚。は離婚の原因をつくった父についていく気になれず、苗字は変えないで母の籍に入った。
(そんなの……。全然気ぃ付かなかった…)
生活感のある部屋。あの場所でたった一人でいたかと思うと何も言えなくなってしまう。は帰ってくるはずのない両親を待ち、自分を部屋に招き入れていた。
時間を埋めるように裸で抱き合って、俺はたぶん……コイツの寂しい気持ちを埋める存在だった。
頼れるやつがいなくて、俺に抱かれてたと思うとひどく…やるせない…。