【R18】【ごちゃまぜ裏夢✿短編集】今夜はOKかもしれない。
第16章 ハイキュー✿黒尾鉄朗「アイワナビー」
走ったら偶然どっかで見付けられるんじゃないかって、駅、バス停、空港、街中、片っ端から思い付くところを走った。制服だし革靴だし超走り辛ぇし。見つけたら一発殴ってやろうと思うくらいあちこち走りまくった。
一瞬でも視界に入れば分かる。けど、どこを探しても見当たらない。
「──… 」
気付いたら最後のメールに「ごめん」とだけ残して、トークを退出。電話も完全に繋がらなくなった。
◇
あれから2年。
大学生になって成人した黒尾はとっかえひっかえ女と付き合うようになったら、「チャラ男」「ヤリチン」と呼ばれるようになった。当の本人はあまり気にしていない。
「んだよ…。ばあちゃんからメール?」
黒尾は一人暮らしせず実家から大学へ通い、今でもバレーを続けている。ポジションは変わらないMBだ。
祖母がメールを使うのは珍しくない。腰を痛めてからあれ買って来いだのこれ買って来いだの、おつかいを頼まれることが多くなったからだ。
「……中学の同窓会、ね…」
─「へえ、お前んとこ中学でも同窓会すんの?」
「みたいっすね。先輩のとこはやったんすか?」
─「今どき珍しいな~。高校はあったけど、中学は一切音沙汰ないぜ。ま、誰かが言い出さなきゃやろうと思わないしな~」
「まあ…。そうっすね」
大学の先輩がおもむろに呟く。
誰かが言い出さなきゃやらない、か…。家帰ったら久しぶりに卒業アルバムをひっくり返そうと思い、今日の練習を終えたのだった。
「ただいま~。ばあちゃん、これ夕飯の材料」
─「ありがとさん。そこに置いといて。冷蔵庫のところにね、アレ張っといてるから」
「あ~、アレね」
アレというのは中学同窓会の幹事の連絡先だ。
「たっつん。懐かしい…」
"たっつん"というのは渾名で名前は"辰也"という。夕飯になるまで時間があり、押し入れからゴソゴソと段ボールを開く。
「たしかこれに……。あった」
小学校、中学校、高校と思い出の入った段ボール。ついでに仕舞いこんでいたネクタイも一緒に出てきた。