【R18】【ごちゃまぜ裏夢✿短編集】今夜はOKかもしれない。
第14章 名探偵コナン✿警察学校組「1day」
話しを聞いていたのだろうか。自分よりも辛そうな顔をしている諸伏が目の前を立ち塞ぐ。
諸「ごめん。後付けてきた…」
「…、」
弱みを見せたくなくて急いで目の周りを拭く。
「今、手持ちそんなにもってなくって。銀行寄ってくるので少し待っていてくれませんか…?」
冷たく放つ自分の言葉がイヤになる。
諸「少し移動しよう」
「あの…、」
諸「さっき良い場所見つけたんだ。ついてきて」
「っ…」
強引だけど優しい手に引っ張られる。さっきのことで頭の中がごちゃごちゃだ。簡単に解けそうな腕も、止めていた蛇口もどうしていいのか分からなくなって、繋がっている僅かな温もりがひどく恋しくて…。
湖が一望できるところまでやってくると、足先を向けた諸伏は何も言わず、の顔を見ないように大きく抱き寄せる。
「っ…」
「…頼りない胸だけど、今はこうさせてくれないか?君を一人にしたくない…」
その言葉で縛るように、伝わる力が少し強くなる。ドキドキするのに嗅いだことのない落ち着く香りと、温かな体温に包まれて、気持ちがグラグラと傾いてくる。
「……、…あんまり…優しくしないでください…」
「…勘違いしてくれていい。弱みに付け込むようなことしてるのは俺の方だから…。君が泣き止むまで……」
「…、」
背中にまわった締め付けが強くなり、心が大きく揺れ動く。プツッと糸が切れるようにそこにある大きな体温にしがみ付き、顔を押し付けて声を押し殺して泣く。
出会って間もない相手にこんなに気を許してしまうことに戸惑いながら、拒むことはできなくて、ずっと掴んでいたくて…。
──…
腫れた目元を角ばった指が壊れものを労わるように濡れ筋を拭う。
夕日に映し出される彼の澄んだ目がとても美しくて、吸い込まれそうな感覚に陥る。
「──ちゃん」
彼が名前を呼ぶとそっと顎を持ち上げられ…その意味を理解する。触れ合った慣れない感触に緊張しつつ、ゆっくりと唇が離される。
「………戻ろうか。ちゃん」
「…はい」
まだ全部払拭できたわけではないけれど、諸伏の微笑みに応えるようには同じくらいに微笑み返したのであった。