【R18】【ごちゃまぜ裏夢✿短編集】今夜はOKかもしれない。
第51章 呪術廻戦✿夏油傑「家庭教師」
「傑くん。今まで無視して、本当にごめんなさい……っ」
ドアノブに手を伸ばして、顔を見られるのは死にたいくらい恥ずかしかったけど傑くんの姿を目の前にして謝りたかった。
ぐしゃぐしゃの顔で傑くんがどんな顔をしているか分からない。
でも、目の前に立っているのは傑くんだ。
ずっと傑くんの幻影を遠くから見ていた。
忘れられない大切な人。
雨傘を差すように腕が伸びてきて、子供をあやす真似事をして頭のてっぺんを撫でてくる。
「怒ってないよ。私はただ、が離れていくのがとても悲しかったんだ」
傑くんの嘆きの言葉なのに陽だまりのように温かく、心が救われた気がする。
「と話せて、私はとても幸せだ。ずっとこうして触れたかった」
「…!」
傑くんは目には見えない壁をこわしての体を抱き締めた。
全身を伝って傑くんの熱を感じる。
懐かしくもあり、未知なる意識した胸板のかたさ。
女の子みたいに柔らかさのない二の腕。
どこもかしこもパーツが大きくて、一瞬で飲み込まれてしまった感覚だ。
(あったかい……)
触れあって分かる心地の良いぬくもり。
背中に腕を回したいけど、条件反射で腕を胸もとに構えてしまったため、そっと頭を傑くんの肩に預ける。
こんなにつらい思いをするなら早く謝っておけばよかった。
悩むくらいなら言ってしまった方が楽になるのに。
傑くんはきっと私を傷つけない言葉を選んでくれる。
本物の妹じゃなくても、傑くんは私にとって最高のお兄ちゃんだから。
「の想いを聞かせてくれるかい?それは案外、はやく解決するかもしれない」
「…うん」
傑くんが嫌わないでいてくれても、これ以上、自分のことを嫌いになりたくない。
願いが叶わなくとも、いつかは思い出に変わっていく。
母親も友達も、そうやって恋をしてきたと教えてくれた。
両想いだったらそれ以上のことはないけど、初恋の思い出は傑くんを思い出すたびに思い返して、私をいい大人へときっと成長させてくれるはず。