第44章 呪術廻戦✿真人「人間の女の子」

この人間を自分の手で殺す。

「容易いでしょ？」

術式展開せずとも簡単に絶える命。なにも価値や重みもない命なのにそれを肯定したくない。

『やだ』

口から出たのは嘘じゃなかった。

『君をまだ殺したくない』

殺すつもりで連れてきた。魂を何度も殺すつもりで連れてきた。人間の女の子と恋愛して遊びたくて満たされるかどうか試した結果はもう…それが目的ではなくなっていた。

『はまだ死なせたくないよ』

「ヘン…ですね」

『人でなしがいう言葉じゃないかな』

「呪いじゃないですか」

『人でなしだったら何ていうのかな』

「今が最高だと思うことで自分勝手な行動を起こすと思います」

『言葉はないの？』

「それこそ解釈の違いが生じます」

『』

「なんですか」

人間は言葉だけじゃ伝わらないことが沢山ある。
言葉だけじゃ足らなければ行動で示す。
聞いていなければ疑心暗鬼。

だって人間は嘘を吐くから。

『愛してる』

好きだとか愛してるだとか相手の受け取り次第。
心の底から出た本音。

「なに言ってるんですか」

『愛してる』

「よく分からないです」

『君を、愛してる』

「なんで…そんなこと…」

『失いたくない、大切にしたい、忘れたくない…。彼の側からすぐ離れなかったのってそういう事だよね』

人間は穢れを漏出するのに綺麗だと思ったことがあった。
たかが人間なのに。

大地を空を海を穢す人間なのに綺麗だと思った。

『と目があって心躍った。触れてみたら心躍った。君のことを他の人間とは違うって思いたい。何でかな。君を素直に殺せないのがすごく…もどかしいんだ』

だから知りたい。

試したい。

はなんて答えるのかなって。

『俺に満足しているなら…さわってよ』

「………」

本能は目の前にあるのに。
お互い迷っている。

夏油が言っていた。

肉体は魂であり、魂は肉体であるって。

と触れて感触が変わった。
術式によって見方を変えれば世界が変わった。

『触ってよ』

真実の言葉なんてないけどそれを証明してほしかった。