第2章 雑音に混ざる愛しきその声
腹ごしらえをしながら一通り屋台を流し、堪能し終わる頃には良い時間になっていた。
薬研くんが言っていた『どデカい花火』がそろそろ上がる頃だろう。
障害が少なく、夜空を広く見渡せる場所へと移りその時を待った。
『んんー、お腹いっぱい』
『良く食べていたよね、なんだっけ…さっきの』
『じゃがバターね』
『そうそれ、君は本当にじゃがいもが好きなんだねえ』
この浴衣の帯やらなにやらが無ければもっと食べられたのに、なんて言えば光忠さんはやれやれ、と苦笑いを浮かべる。
『花より団子、だね君は』
『そういう光忠さんだって結構食べてたじゃない!』
屋台の味は独特だよね、とかこれは僕でも作れるかな、とか。レシピを考えつつ気になるものはしっかりと平らげていて。
抗議をしたら、『僕は男だし、戦で体を使うから力を付けなくちゃいけないしね』
なんて言ってきたけど、それ以上に彼は作ることも食べる事も好きなのを私は知っている。
『食べっぷりが良い伊達男とか、最高に格好いいと思うけどな』
『…そう言ってくれるのは、君だけだよ』
そんなものかな。
本丸に来たばかりの頃、食べ方も綺麗だしあまり食べないのかなあと思う程小食だった光忠さん。
実は、私の目の前では格好悪いからと我慢をしていたようで。
そんな事ある訳ないんだから、そういう我慢はしないで、と言ってからはお腹いっぱいになるまで食べてくれるようになったけれど。
この全てが整った男の人が、お行儀良くも豪快にどんぶりご飯をもりもり平らげていく様は圧巻で今でも覚えている。
だけどそんな姿こそ、私は親近感が持てて大好きだった。
『…ニヤニヤして…何を考えているんだい?』
『うん?痩せ我慢してた頃の光忠さんを思い出していたの』
『やっぱり!!もう、それはやめてよ…』
顔に出ちゃっていたのかな…ちょっと拗ねてる光忠さんに思わず笑うと、彼も困ったように照れくさそうに笑った。
さっき散々照れさせられたのだから、これくらいのお返しは良いよね?なんて思いながら。