第8章 欲張りな僕ら
違うよ、違うんだ
僕はただ、君のそばにいたいだけ...ただそれだけだったのに。
「......」
「...光忠、さん?」
ああダメだ、上手く笑えない...
あまりの伝わらなさに悲しくなってきてしまった...情けない。そんな僕を見た主が驚いて目を見開く。こんなにも余裕を無くして繕えないでいる自分が今どんな顔をしているのかすらわからない。
「...ねえ、僕だけ?側にいられなくて...寂しいと思うのは...僕だけなのかな?」
「えっ」
だけど、このままはもう嫌だと...1度口に出してしまったらもう、止められなかった。
「...君が僕らのことを考えてくれているのは良く分かっているよ、でも...」
君はそれでいいの?
君と僕、二人の時間が無くなってもいいの?
恋人が夜に訪ねてくる意味も忘れてしまったの?
「.....好きな人の側にいられないのも、寂しい事なんだよ...?」
「......っ」
彼女が息を飲んだ。まさか僕がこんなふうに思っていたなんて考えてもいなかったのだろう。目の前でさまよう手をそっと握ると、びくりと体が跳ねる。
「仲間も恋人も求めてしまうのは...欲張りなのかな...」
ずっと驚いたままの瞳を見つめたまま、ポロポロと言葉を吐き出した。ただただ正直な僕の気持ち。
「...でも僕は、もっともっと...君の側にいたいんだ...」
「駄目、かな...」
知って欲しかった、家族同然である大事な仲間に会えずに寂しい思いをさせていると思い悩んでくれた君に。仲間だけでなく、恋人である君もまた同じように大事なのだと。
何よりも他人を優先してしまいがちな、優しくてちょっぴり寂しい君に、知って欲しかった。
「......」
少しの沈黙のあと
掴んでいた君の手が、僕のそれをきゅ、と握り返してくれた。
「...駄目、じゃないよ...」
そして空いた方の手で、僕の髪を撫でる。
「ごめんね、ごめんなさい...まさかそんな思いをさせているなんて...」
嬉しかったのだと、彼女は言った。
ずっとずっと待ち焦がれてきた仲間に会えて、嬉しそうに楽しそうにしている僕の姿が見たかった...それを見ることが出来て、叶えてあげることができて嬉しかった。