第6章 ただ、会いたかった
ともかく今は主に近づくな!
と、清光はそれきり押し黙ってしまった光忠さんを部屋から追い出してしまった。そのままピシャリと障子を閉めると険しい顔のまま私の正面にどかりと腰を下ろした。
「......きよみつ、なんで」
「主、あんたも馬鹿でしょ...」
私の言葉を遮ると、勢いを消しこちらの目をじっと見つめたまま穏やかに話し始める。光忠さんとでは態度が違いすぎてか少し...気が抜けた。
「燭台切が主を責めるって本気で思ってんの?」
だがその言葉にまた、身構える。そんな私に清光は困ったように笑った。
傾けた顔に、金色のイヤリングが揺れて光る。
「あのね、主が本当に愛してくれてるの俺ら皆分かってるよ」
「俺らの仲間とか、絆とか元の主との事とかを蔑ろにしないでくれてんの、感謝してる」
「だけどねえ、なーんか忘れてない?」
「...え...?」
なんの事だか全く分かっていない私はただただほうけた顔で清光を見つめる。
さっきまでの困った笑顔は、悪戯っぽいものに変わった。
「あんただって俺らとずっと一緒に過ごしてきた家族、一緒に戦ってきた仲間でもあるんだよ?」
「もちろん、主であることに変わりは無いけど同じことじゃん」
まあ、賛否両論あるだろうからね
でもこの本丸ではそうだからね
そう言って清光は私を抱きしめた。
「...わたしも、かぞく?」
「そう、家族...ねえ、もしその大事な家族が思い詰めてご飯食べなくなったらどうする?」
「......しんぱい、する」
「うんうん、それで?」
「うう...ごはん、たべさせる...」
「だよね~、俺もそうする!」
堪らずボロボロ泣き出す私を抱きしめたまま、あやす様にゆらゆらと揺れる清光は私の気づけないでいた事をゆっくりと教えてくれる。
本丸のみんなが私をどう思っていてくれていたのか。それから、
「むり、しないでって、いう」
光忠さんがどれだけ私を思っていてくれていたのか。私はそんなことすら分からずに、危うく八つ当たりまでしてしまう所だった。
心に余裕が無いと、自分にだけでなく周りにも優しくなれなくなってしまう。
光忠さんは、それを分かっていたのかも知れない。それでもただ、ただ私を励まし無理強いをすること無く心を配ってくれた。
本当は1番、光忠さんが辛かっただろうに。