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【とうらぶ】我が家の燭さに【短編集】

第6章 ただ、会いたかった



「そこはありがとう、だろう?」

不平不満を一切言わず、ずっと前向きにみんなを纏め上げ導き、私にも変わらない優しさをくれる光忠さんへの罪悪感。
私の無力さに、仕方ないなと諦めの気持ちを持たれてしまっていたら...せめて、本当の気持ちをぶつけてくれたら...
私の単なるエゴなのは分かっていても、気持ちを吐露せず明るく振る舞う姿を見ているのが辛くて暫くまともに接することが出来ずにいた。
以前はこんな時、他愛のない話をして笑ったりしていたのに...今は言葉が出ない。
静まり返った部屋には黙々と食事を摂る私が起こす音だけが響いていた。
温かいスープはお腹を温めるだけでなく、張り詰めていたモノがほっと出てくるような感覚がする。思い悩む溜息ではないそれをつけて、肩の力が抜けたような気がした。

「...ねえ、貞ちゃんの事だけど」

それを見計らっていたかのように、今まで黙って私の食事を見守っていた光忠さんが口を開いた。

「そんなに焦らなくてもいいんだよ、今のように肩の力を抜いてさ、ね?」
「.........」
「君が僕らの事を思ってしてくれているのはとても良く分かる、だけど...」

だけど
だけどなに?
そこまで言って言葉を選ぶように思案する彼をぼんやりと見ていた。
なんて言われるの?君はそこまで力が無いのだから無駄に足掻いては格好悪いとか?
......違う、違う違う
そんなことを考えたい訳じゃないのに、なんでこんなにも私は卑屈なのだろう。
光忠さんは何にも悪くない、悪いのは私なのに。
ききたくない
「僕は」
聞きたくない
「君が...」

「はーい!!そこまで!!」
「!!?」

バターン!!と勢い良く障子が開いたかと思うと、清光が綺麗な赤い猫目を釣り上げて私たちを見ていた。

「き、きよみつ...!?」
「びっくりした...加州君、どうしたんだい?」

あまりの事に私達は驚いて固まってしまった。
それに構うことなく清光はまくし立てる。

「どうしたもこうしたも無いよ燭台切!あんたが主を追い詰めてるってなんでわかんないの!?」
「...っ、僕が主を追い詰めてるって?そんな訳ないだろう!?」
「事ある毎に貞ちゃん貞ちゃんて!それ聞いてあんたを想ってる主が必死にならないわけないじゃん!」
「.....っ」

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