第5章 こう見えて私は恋をしていた
「...遠征先で見つけてね...今日の、君に似合うと思ったんだ」
え?
なんて?
さっきから展開が早すぎて付いていけないんだけども...!?
え、だって、光忠さんは今日の私をどういう風の吹き回しだなんて触れもしてくれなかったじゃないか...それを、どうして...
「今朝は、ごめんね」
私の戸惑いが伝わったのだろうか、心を読まれたわけでは無いだろうけどきっと顔に出ているんだろう、光忠さんが続ける。
「いざ、格好を整えた君を前にしたら...その...」
「...、ほ、本当に似合っていたから!可愛かったから...!」
待って
待って待って
状況を整理させて
私の姿を一笑に付した訳ではないの?
似合わないと、否定しているわけではないの...?
「本当は頑張った君を...褒めたかったんだよ...」
顔を真っ赤にしながらも取り繕いもせず、ぽつりぽつりと話す彼に今朝のような棘は見つからなくて...と、いうか...これは、もしかしてだけど、自惚れではなく客観的に見て、照れ隠しと...いう、やつ、だったのでは...
「本当に...ごめん...」
心底申し訳ないという思いを全面に出した光忠さんは、その場で私に頭を下げた。
いや、いやいやいや!
確かにちょっと、ちょっとだけショックではあった!あったよ?だけど...!
「ま、待って光忠さん、顔を上げて!」
「駄目だよ!僕は君を傷付けてしまったのに...!」
「いやいや!そもそも光忠さんにそう言わせてしまった元凶は私なんだから!」
そう、そうなんだ。
全ては私のつまらないコンプレックスのせい。
なんだかんだ周りのせいにして自分を疎かにさせていたのは、逃げていたのは私だ。
私は私だと突き進むにはメンタルが弱く、かと言って今の状況では良くないと頭では分かっている...中途半端で面倒臭い奴なのだ。
光忠さんはただ、やる事はきちんとやろうとごく当然の事を言ってくれているだけで、勝手に卑屈になっていたんだ。
私なんかが何をしたって無駄なんだと。
「...私の方こそ...ごめんなさい...」
「無様な主で、ごめんなさい...」
光忠さんは何も悪くなんかないのにね