第5章 こう見えて私は恋をしていた
「...と、いうわけで報告は以上だよ」
「ありがとう、お疲れ様でした!お風呂出来ているから夕餉までゆっくりしていてね」
「ああ、ありがとう」
遠征から戻った部隊を出迎えていると、部隊長の光忠さんが『話があるんだ』とそっと声をかけてきた。
遠征の報告にしてはちょっと雰囲気がちがう。
...なんだろう、ちょっとだけ構えてしまう。
やっぱり今朝のことがあったからなのかなあ...話ってなんだろう...
一通り遠征の報告が終わると、少しの間静寂が流れた。
「.........」
「.........」
(ん、ん...なんだ、なんだろ...)
光忠さんは、正面に座り私をじっと見ていた。
正直、怖い。
何を言われるんだろう、やっぱりこの格好は私には似合わないとダメ出しされてしまうんだろうか...。
色々と良くない思考がぐるぐるとし始め、いい加減沈黙に耐えられなくなってしまいそうな頃
光忠さんが静かに口を開いた。
「...これ、受け取ってもらえるかな」
「え、え?」
いつも堂々としている光忠さんが珍しく、不安げな顔をしていた。というかなんだろう、何かを貰うような日でも事柄があった訳でもないのに。
戸惑って手が出せずにいる私に、光忠さんは不安げなまま、それでも急かすようにその綺麗に包まれた物をずいと差し出してきた。
「...な、なに?」
「開けてみて」
優しく穏やかな口調でも、有無を言わさない圧的なものを感じる。こうなると光忠さんは本当に譲らない。仕方なし、というには失礼だけれどおっかなびっくりその包を受け取ると解いて見る事にした。
「...わ...」
現れたのは、シックなデザインのリボンバレッタ。黒と金の綺麗なツートンカラーでワンポイントの桜の刺繍も私の好みにドンピシャだった。