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【とうらぶ】我が家の燭さに【短編集】

第5章 こう見えて私は恋をしていた



今日はよく晴れた朝だった。
僕はいつものように彼女の様子を見に部屋へ向かった。手には、寝癖直しにドライヤー、ヘアブラシ。アイロンは確か持っていたはずだからそれを使おう。どうせまたあの子のことだから身なりを最低限にしか整えないだろうと踏んで(しかも彼女の『最低限』は僕にとっては力量が低すぎるものである)。
思わずやれやれと苦笑いを浮かべながらも彼女に声を掛けてその襖を開けた。

思わず固まる
目の前にいる彼女は、自然なお化粧をして髪も綺麗に整えた姿だったからだ。
服装もいつもの緩い姿ではなく今まで見た事のない長めのスカート姿。
何か、何か言わなければと思った僕の口から出た言葉は本当に最低だったと思う。

「...今日は、どういう風の吹き回しだい?雨でも降るかな」

その時の、彼女の顔はほんの一瞬
見逃しそうな程の一瞬だったけれど、酷く傷付いた、悲しそうな顔だった。
でもすぐにいつもの、僕の小言を聞いている時のような面倒くさそうな顔になる。

「ふはっ!残念、今日は絶好の洗濯日和だよ!おはよう」

苦笑いをしながら挨拶をしてくれた君に、僕は完全に自分の失言を自覚しながらも訂正する機会を逃してしまった。

...なんたる、無様な


その後、時間はいつも通りに過ぎた。
彼女の僕に対して態度も変わらず本当にいつも通り。ただ違ったのは僕の心の中だけだった。
ふと、通りかかった部屋の前で、加州くんと乱くんが主の姿を褒めている所に出くわす。
いつもこれくらいしなよ!という指摘と共にではあったけれど二振りはとても素直に感想を伝えていて、彼女も照れくさそうに微笑んでいた。

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