第5章 こう見えて私は恋をしていた
彼女の『女性』としての性質が意図的に、しかも無意識下に抑え込まれている事は、割と早い時期から気づいていたんだ。
だから、という訳では無いけど僕は彼女の『世話焼き』を務めた。
本当は、とても優しくて涙脆くて、僕達刀剣男士を大切にしてくれる可愛らしい女の子。
着飾る事も甘いものも本当は大好きで。
でも、育つ環境や自分の...えーと、こんぷれっくす?とやらに振り回されて素直になることが出来ない、ちょっとだけ可哀想な女の子。
彼女のそのすらりとした長身を、僕は密かに気に入っていたんだ。だって、着飾ったら絶対に見栄えがいいだろうし何より素敵だと思っていたから。
だから、彼女が意図的に自分を『女性』としての性質から引き離そうとしているのが嫌だった。
もっと自信を持っていいんだ
君は本当に素敵なんだから
気を張らずに甘えていいんだ
皆だって気づいてる、君が本当はどんな子か、なんて。隠さなくたって誰も君から離れたりなんかしない。
ずっとずっと伝えたくて、でもちょっと卑屈な君にムッとしてしまって軽口を叩いてしまったりして言い合いになっちゃったり。(でもそんなやり取りをちょっとだけ気に入ってしまっている僕も相当なんだろうな)
まあ、僕はどんな君だって受け止めるつもりだけど...見たいじゃないか。
綺麗に着飾る君を。
こう見えて、僕は彼女に恋をしていたんだ
それなのに。
なんで僕はあんな事を言ってしまったんだろう。