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【とうらぶ】我が家の燭さに【短編集】

第5章 こう見えて私は恋をしていた



他の審神者さんから聞くような、いわゆる甘くて柔らかな笑顔、なんて向けられたことが無かった。まあ当然ではあるんだけど。
...そういえば、光忠さんはどんな時に笑ってくれていたんだっけ...全く無いわけではないけれど...思い出せないなあ。
もう一度、見たいなあ。


いつもはザックリとしか直さない髪に丁寧にアイロンを掛けて綺麗に伸ばして、ハーフアップにしてバレッタで留めた。
長めではあるけれど、ショートヘアな私にはこれくらいが精一杯、あともう少し可愛いバレッタを持っていれば良かった。
いつもは眉毛を書くだけのズボラメイクも、肌の色をちゃんと整えてアイメイクもした。ナチュラルすぎてよく見ないと分からない、でも何もしないよりはいいかなと。

...楽しいなあ
いつもよりは、多少見れるようになったかも知れない自分の姿を鏡で見る。
決して最新とは言えないメイク道具も、本当は愛しいものばかりで。
またこうして自身を整えようとするきっかけが出来たことは、素直に嬉しいと思えた。


けれど、やっぱり


「...今日は、どういう風の吹き回しだい?雨でも降るかな」


ですよね

朝起こしに来た光忠さんの、第一声がそれだった。おはようとか、そういう挨拶が先じゃないのか、あ、いや、そうじゃないか。
ある意味想定はしていたんだ、こうなるんじゃないかなって。だから、取り乱さずに割と落ち着いていられた。
...優しく笑って貰えなかったのは、ちょっとだけ残念だった、そう本当にちょっとだけだよ。

「ふはっ!残念、今日は絶好の洗濯日和だよ!おはよう」
「あ、...うん、おはよう」

こういう時の立ち回り方ばかり上手いのが、我ながら複雑だった。

それからは何もなく、ただいつも通りの日常だった。本当にいつも通り。
ああでも、清光と乱ちゃんは無けなしの努力を褒めてくれた。可愛いけど、いつもそれくらいでいなよ、及第点!なんて手厳しいものだったけれど私にはそれ位が丁度良かったのかもしれなかった。光忠さんには何も言ってもらえなかったけれど、二振りが反応してくれたのだけでも充分だ。

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