第4章 某テーマパークでデート
一通り見て周り、乗り物も堪能した頃には辺りはすっかり暗くなっていた。
この時期は割と閑散としているために酷い混雑は無く...ここまで楽しめたのは運が良かったと思う。今は夜のショーを待ちながら大通りの柵に座っている。
ただ、めっちゃくちゃ寒い。
近くに海があるせいか本当に仕方ないんだけど寒い。防寒はしっかりしてきたのになあ。
「...ねえ」
「うん?」
「こっち、ほら、おいで」
悴む両手にほうほうと息を吹きかけていると、不意に呼ばれ手を引かれた。
光忠さんの長い両足の間に引き寄せられ座らされたかと思うと、後ろからぎゅうと抱きしめられて思わずぎょっとする。
「み、光忠さん!ここ、外...!」
「大丈夫だよ、この寒さだし...ほら見て?」
外でこうしてくっついたりするのに抵抗がある私は慌ててじたばたするものの...指し示された方向を見やると、こちらと同じようにくっついて暖を取り合うカップルが何組も目に入った。
カップルだけでなく、子供に寒い思いをさせまいと抱きしめる親御さんもいる。
「ね?だから君は黙って僕に抱っこされてなさい」
「.........」
子供に言うような口調だったから、思わずムッとして振り向くと...それとは真逆に愛おしむような柔らかな視線とぶつかって思わず言葉を失ってしまう。
...ずるくない?さっきまで可愛くはしゃいでいたっていうのに。こういうときはしっかりと『恋人』の顔で。
頬をすり寄せられて一気に心拍数が上がる。
「ちょっとは、格好良いところを見せないとね」
私の反応に気づいたのかクスリと笑った。
もうそんな事、充分わかっているのにな。
それでもまたこうしてドキドキしてしまうのだから、私も相当なのかもしれない。
「あ、始まったみたいだね」
光忠さんの温度に気を取られていると、ショーが始まったようで辺りの照明の色とりどりの光と音楽がパーク内に広がった。
飲み込まれそうな程の光の海と、可愛くドレスアップしたキャラクターやダンサー達。
私はこれを見るのが大好きだった。いい年して涙腺は刺激されてしまうけれど、それでもこうして綺麗なものに感動できる自分でいられることに安心したりする。
2人で夢中になって、歓声と音楽の中流れていくショーを見つめていた。