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【とうらぶ】我が家の燭さに【短編集】

第3章 君ありて幸福



主は、手紙を書くのが好きだった。
端末を使ってのやりとりをする方が早いこともあるだろうに、用件があっても無くても何かしら小さな紙にちょっとした言葉を添えた物を渡すやりとりを楽しみ、大事にしている人だ。
僕には、良くご飯の献立の要望が来ていたなあ.....ちょっと特徴のある猫さんや、兎さんの絵を載せたりして。
急を要するものでも、重要な内容が書かれたりするでもない。けれど、渡されたそれを僕は1枚たりとも捨てることはなかった。できなかった。
彼女とのやりとりは、どんなものでもどんな事でも蔑ろにしたくはなかった。
彼女に関わるものならばなんだって知りたかったし、受け取りたかった。

だから、なのかな

封筒に書かれた、自分の名前。
その文字を見た時に感じた胸騒ぎ。
同調、とはまた違うけれど、書かれた言葉に乗ったモノ。
それが何か知りたくて、足早に自室に戻ると
はやる気持を抑えつつ丁寧に封を切った。
中には、封筒と同じく真っ白な便箋が1枚と

『...押し花...?』

青く、朝顔に似た花の押し花の栞が忍ばされていた。
こんな事は、初めてだった。
いつも渡される手紙は小さく折り畳まれたものだったり、同じく封筒に入ったものでももっと賑やかな印象で。
けれど、彼女は花が好きな人だからきっと何かしらの意図があるのかも知れない。
ただ、自分にはそこまで花に対する知識が無く今すぐにはそれを汲み取ることは出来なかった。

『...それなら...』

手紙の内容に目を通すことにした僕は、便箋を抜き取ると静かに開いた。

『...っ、』

文字を見た瞬間に一気に流れ込んでくる、彼女の想いと...苦しみ。
宛名を見た時の胸騒ぎが何だったのか、今ここで繋がる。
手紙に書かれていたのはたった一言

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