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【とうらぶ】我が家の燭さに【短編集】

第3章 君ありて幸福



その手紙が届いたのは、神無月も半ばを過ぎた頃だった。

『はいコレ!燭台切宛てだよ』

紅の似合う初期刀君はそう言うと白い封筒を手渡してくれた。
どうやら皆へ宛てた近況を書かれた物とは別に自分のみへと宛てた手紙があったようで。
...僕にだけ、という事実に思わず顔が緩んでしまう。
お礼を言って受け取ると、『光忠さんへ』と書かれた小さな字が目に入る。

『............』

彼女の友人の審神者さんは、懇意にしている刀剣男士と同調する事があるのだという。
お互いにお互いの喜怒哀楽が伝わるというのか、無意識下にどちらかの強い心の動きに沿うようになっているのか詳しいことは分からない。
けれど

『...こういうこと、なのかな』
『うん?なにがー?』
『ああ、ふふ...なんでもないよ』

独りごちた言葉が聞こえてしまったのだろう、不思議そうに見つめられるが問題ないと説明をすれば、加州君はそれ以上何かを聞いてくることは無かった。

神無月
主は、ひと月程現世で職務をこなさなければならなくなり...本丸を空けていた。
神無月と言うのだからいなくなるのはむしろこちらの方なんじゃないかな、まあいなくなるつもりなんかひとつも無いけれど。
たくさん手紙を書くね、そう言っていた彼女からの便りはこれが初めての物だった。
...相当な、激務だという話は出かける前に聞かされていたけれど、まさかここまでとは。

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