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マイクから紡ぐ夢【ヒプマイ】

第1章 『野良猫ギャンブラーの手懐け方』有栖川帝統 R18



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「いただきまーす!!!」

冷蔵庫にあった肉、野菜で簡単な丼とスープを作れば、挨拶とともにそれらは口の中に消えていく。
私の2日分の食材なんだけれどなと愚痴を吐きたくなるが、美味しそうに食べる帝統の顔を見て言う気をなくした。

食事を作っている間に帝統には風呂に入ってもらったため、帝統はいつもの洋服でなくライトグレーの上下のスエットを身につけている。
何日公園で生活していたのか、言いたくはないがニオイが…
本人に了承を得て洋服をすぐ洗濯機に入れ、帝統用に買っておいたスエットと下着を風呂前に準備した。

帝統は家に来る時はほとんど何も持ってこない。
その日暮らしをしているからか、必要最低限の荷物しか持たないらしい。
帝統にはそういうところに関して求めるだけ無駄だとわかっているので、帝統用にと買った服や食器が少しずつ自分の家に増えていっているのが現状だ。

「おかわりあるから。」

そう言うと早速空になりかけている丼の中身をかっ込み、私に丼を差し出してくる帝統。
それを受け取り残りの分を盛ってあげると帝統は再び丼を食べ始めた。
ふと帝統の方をむけば、長い髪の毛から雫が滴りライトグレーのスエットを染めている。

「帝統、髪の毛ちゃんと拭いた?」

髪の毛から垂れてる雫を拭かせる為、近くにあったタオルを差し出すけれど受け取る気は無い。
仕方なく背後に回ると帝統の頭にタオルをかけ、食事の邪魔にならない程度に頭を拭く。

「ん!ごちそーさん!」

箸と空の丼を机に置いた帝統は私の方を振り向くとにかりと笑う。
不覚にもどきりとしてしまった心臓と赤く染まってしまった頬を隠すため、そっぽを向く。

「じゃあ洗い物…」

紡ごうとした言葉は途中で止まる。
帝統の手が宙に浮いた私の手を取ったから。

「夏乃チャン、逃げんの?」

掴まれた腕は痛くはない。
でも、すぐに解けるほど弱くはない。

「逃げるわけじゃ…」
「じゃあ来いよ。」

ぽんぽんと帝統が叩いたのは胡座をかいた自分の足。
その足の上に腰をかけると、くいと顎を上げられ暖かな唇が降ってきた。


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