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マイクから紡ぐ夢【ヒプマイ】

第2章 『待ち合わせ』



『夢野幻太郎』


スマホの方がメッセージアプリがあるから、連絡取りやすいよ。
そう前に伝えた時に幻太郎は言った。

「こちらの方が、別のどこかに繋がりそうで良いんですよね。」

ガラケーを持ったまま人差し指を立て唇に当てる。
そしていつものように言った。

「まあ、嘘ですけど。」

ーーーーーー

何度も打ったメール。
メッセージアプリならわかる既読が、メールだとわからない。
待ち合わせの犬の像のところまで来たけれど幻太郎はいない。
何度目かの着信を切れた息で掛け、コール音を聞く。
数回ののち、聞こえた声に安心する。

「もしもし、夢野です。」
「幻太郎、ごめん。何回もメールはしたんだけど…
残業になっちゃって…」
「まろはそんなことは知らないでおじゃる。
もう家に帰ってきちゃったでおじゃる。」

冗談めかした喋り方が、今は辛い。

「そうだよね…せっかく締め切り終わったのに、ごめんね。」

泣きそう。
堪えるために俯く。








「まあ…嘘なんですけどね。」

電話、直接、両方から聞こえる声。
顔を上げれば目の前には幻太郎。
非現実に頭がついていかない。

「え…?」
「どうしたんだい?わっちが幻に見えるかい?」
「いや、違…」

幻太郎は私が座った前にしゃがむと私の顔を両の手で包む。

「ごめん、泣かせた。」

つうと伝う涙を親指で拭いてくれた幻太郎はそっと私の唇を塞ぐ。

「お詫びは何がいい?」

私だって待たせたのに…
そう思ったけれど珍しく嘘はないようだ。

「幻太郎の家…行きたい。」

そう伝えれば、幻太郎はくすりと笑い私に手を差し出す。

「じゃあ姫のようにもてなさなきゃいけないね。」

お手をどうぞ?
そう行って差し出した幻太郎の手は、ずっと外で待っていたかのようにひやりと冷えていた。


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