第1章 はじまり
それを一口飲み、長谷部が話しはじめる。
「先程話した通り、主は人とあやかしの間に産まれた半妖と呼ばれる方だ。九尾の狐というあやかしの血を受け継いでおられる。
九尾の狐の一族は白や黄色がかったものがほとんどだそうだが、主は黒い九尾の血を受け継いでおられ、それは他のものより霊力が強く気性が荒いのだそうだ。その色と気性の荒さ故に、黒九尾は一族から蔑まれてれていたらしい」
「なんだか、やっかいな血筋だな」
同田貫の言葉に、光忠が悲しそうに頷く。
「だが、主は気性が荒いなどということはなく、お優しい方だ。それに半妖ではあるが、霊力は強く引き継がれたらしく、そこに目をつけた政府により審神者に任命されたらしい。仲間内で酷い目に合わされながらも、主は、主は、立派に育たれ・・」
「長谷部くん、今はちゃんと話さないと」
目頭を押さえて言葉に詰まる長谷部を、光忠が苦笑いしながらなだめる。