第1章 はじまり
「おぉ、これは柔らかい。実にういのう」
にこにことしながら三日月が胸に抱いた赤ん坊を覗き込むと、赤ん坊は少し怒ったように口を真一文字にむすんだ。
「ほぅ、怒っておるのか?坊は賢いのぅ。お前が憎いわけではないぞ。ここの者は皆、主が好きなのじゃ。坊も主が好きか?どうじゃ?」
「だぁ」
「そうか、坊も主が好きか。ならば我らは仲間だ。いい子にしておれば、皆も坊のことを好きになるぞ」
赤ん坊は三日月の言葉を理解しているのか、目をパチクリさせながら静かに聞いていた。
「うーまぁ」
返事をするようにそう声を出すと、今度は三日月に笑って見せた。
「よきかなよきかな。よい笑顔じゃ」
そう言う三日月と赤ん坊を見て、全がパンッと手を打った。