第6章 呼ばれた扇子と紅い王子との出会い
「これでワシの目的は終わった。さあ、受け取ったからさっさと行くがいい」
「えっ?お、お支払いは?」
「そんなもんはいらん。ほらほら、出て行きな」
店主がグイグイとの背中を押して店の外へ出ようとするが慌てて質問する。
「ま、待って下さい!貴方は何者なんでしょうか⁉︎」
「…なに、ただの老人じゃよ。まあ、しいて言えばお主の道を導く者と言えようか」
「え…?」
「影からお主らの旅の旅路の果てに光あらんことを祈ってるぞ」
「「…!」」
トン…ピシャン
と葵が店の外へ出た瞬間、引き戸が閉まった。
「ち、ちょっと待っ……あれ…」
「……いつの間に、店が消えている」
すぐ振り向くといつの間にか霧のように店全体が消えてしまった。先程まで店があった場所の前を立つと葵は唖然する。
「…結局一つしか分からないみたいだね」
「うん…私たちが導く者って、どういう意味だろうね」
「さあ…でもあのおじいちゃんって本当に何者なんだろうね…」
「…また、会えるかな?」
「そうだといいね。…あ‼︎早く戻らないと悟空が全部食べてしまうよ‼︎」
「はは…皆の所へ戻ろっか!」
「うん!」
扇子を持って葵にの頭の上を乗せたまま三蔵たちの所へ小走りする。去って行く二人を影から見送る人物がいた。見た目は身体が薄っすらとしているが、先程の店にいた店主だ。
『…これでいいんじゃな。なあ、『舞』…』
哀しそうな表情を浮かべる店主はある人の名前を呟く。の後ろ姿がある人の後ろ姿と重ねているのを見て小さくため息を吐く。
『これが、《運命》なのか?500年前と同じ事にならないように祈るしかないか…』
ーー『煌仁(あきひと)』おじさんーー
ワシにそう呼ばれるのはお主だけだったな。まさか、500年前あんな事になるとは…現在になってお主を会えて嬉しく思う。舞の生まれ変わり…『』か…ワシの目的はここまで。あとは、お主たちの旅路の安全を祈っておるぞ。
店主ーー煌仁は優しく微笑んでから音を出さず姿を消えていったーー。
「!……?」
何かを感じたは後ろを振り向くが、町の人々があちこち歩いているだけだ。気のせいと思ったは前を向いて小走りする。