第5章 悟浄の過去と覚悟
と葵はその場で止まり、向かって来るカラスをじっと見つめるとついに二人の前が近づいたと思ったらいきなり二人の周りにぐるんぐるんと回り始める。
「え?な、なに?」
「……」
突然の行動するカラスに困惑する葵だが、は困惑せずカラスを見る。回り続けるカラスの黒い瞳がと葵をじっと見つめる。まるで監視されているよう、なんだか気味が悪い。
「…悪い事は言わない。今すぐ去るがいい」
から少し低い声でカラスにそう言うとビクッと少し震えてから回るのをやめてすぐと葵から羽ばたいて去って行った。
「…あのカラス、一体なんだろう?」
「…私の予想だと牛魔王の手先だけじゃなくて他の私たちを狙う敵がいるかもね」
「…まじで?」
「分からないけど、葵はともかく私の能力は珍しいだから狙う敵が多いかもしれないけどね…ふう…油断しない方がいいかもね」
「、三蔵たちはどう言うの?」
葵の言葉にはカラスが去って行った方向を見つめながら複雑そうな表情を浮かべる。
「…何かあったら三蔵たちに言うようにと言われたのに、他も敵がいるだとそんなの、言えるわけないよ…。もし強い敵だったらこれ以上巻き込む訳はいかないよ」
「…」
「分かってる、分かってるよ。でもだからこそ私たちしかやるしかないんだよ。…葵、この事は三蔵たちに言わないで」
「…分かった」
「ありがとう。じゃあ…戻ろっか。皆が待ってるしね」
「うん…」
その場から飛んで村へ戻るが葵はを辛そうな表情になって見る。
「(は優しいだから、三蔵たちに巻き込まれたくないから言わないなんて…。また昔のみたいになるのは嫌だよ…)」
葵の心の中にそう思いながら小さくため息を吐く。の更なる過去を知っているのは長く一緒にいた葵だけだ。
いつか、が光の道を進めますようにと葵の心の中に祈りながら飛び続けた。