第8章 ダチュラ/沖矢※
どうしよう…!
私は全力疾走で
走っていたが遂に
腕を掴まれ引っ張られた
『あっ…!いやっ…!
離して下さい…っ!!』
沖「名前さん、私です」
バッと顔を上げると
そこには沖矢さんがいて
沖矢さんの顔を見た後、
脚がふらついてその場にへたり込んだ
沖「何故、遅くなるのに
連絡をくれなかったんですか」
沖矢さんが片膝をついて
目線の高さまで合わせてから
低い声で言い放った
『ごめんなさい…スマホの…
バッテリー…切れちゃって…』
怖くて怖くて体の震えが止まらない
『おきやさんっ…』
私は思わず
沖矢さんの胸に飛び込んだ
沖矢さんの腕は
私を優しく包んでくれて
安心したせいか
ぶわっと涙が溢れ出た
沖「大丈夫ですよ
私がついてますから」
何度も背中をさすられる
『もうやだ…こわいっ…
おきやさん…っ…たすけてっ…』
沖矢さんが体をそっと離すと
両頬を包まれた
唇に軽いキスをされる
何が起きたのか分からず
ビックリしていると
親指でそっと涙を拭われた
沖「泣いている名前さんも
可愛いですけど、私は
笑っている名前さんの方が好きです」
『ま、また…そんな
ジョークを言って…私…
勘違いしちゃいますよ……』
沖「ジョークなんて
一度も言った事ありませんし
冗談で唇にキスをしたりしませんよ」
私の鼓動はまた別の意味で
早くなっていく
恥ずかしくなって俯くと
再びぎゅっと抱き締められる
沖「貴女の事が好きです」
沖矢さんから告白されて
初めて自分の気持ちに気付いた
『私も…沖矢さんの事が…
……好きです』
お互いの気持ちが通じた後
手を繋いでそのまま工藤邸に
帰る事になった
あの気を失って
沖矢さんに助けられた日と同様に
お風呂や着替えなど用意してもらい
あの時と同じ部屋を借りて
休む事に。
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