第6章 11月7日/松田※
『…先輩…キスして…っ』
私は松田先輩の腕を引っ張って
キスをせがんだ。
先輩は何も言わずに
私の頬に手を添える
唇と唇がそっと触れ合った
松田先輩との初めてのキス。
嬉しくて、悲しくて
溢れた涙は止まることを知らなくて。
唇が離れると
私は先輩の胸に飛び込んで
強く、強く抱き締めた
このまま抱いて欲しい
何も残らないなら
せめて、一夜限りでいいから…
『…抱いてっ…』
松「名前、そう簡単に
男に体を許すもんじゃねぇぞ」
『…先輩だからっ…いいの…
松田先輩に、抱いてほしいのっ…』
我儘だって分かってる
『…おねがい…っ』
私は顔を離して
松田先輩を見上げた
『…今夜だけで良いからっ…』
先輩は私の頬に手を添えた
松「そのお願いは反則だぞっ」
先輩は親指で涙をそっと拭ってくれて
額にちゅっとキスを落とした
松「ほら、ベッドに行くぞ」
松田先輩が立ち上がり
手を差し伸べられてそれに応える
手を引かれてリビングから
寝室へと誘導され
ベッドの上に座った
先輩は仕事帰りにここへ来た様で
着ていたスーツを適当に脱ぐと
私に向かい合って
私の服に手を伸ばした
松「今更嫌がっても
止めてやんねぇからな」
そう言いながら私の服を脱がしていく
お互い下着だけを身に纏った姿になり
そっと体を押されて
ベッドに組み敷かれた
松「お前、痩せたな…
飯食ってねぇだろ」
『…ここ最近、
ちゃんと食べてなかったかも…』
松「ちゃんと食え。
女はぽっちゃりしてるぐらいが
抱き心地が良いんだからな」
『…はい』
松「今度、飯奢ってやるから」
ドクン…と心臓が跳ねた
もう叶わない約束なんて
したくないのに…
松「こら、泣くんじゃねぇ」
そう言われても
涙は勝手に流れてくる
目を擦っていると
不意に唇を奪われた
ぬるりと舌が侵入して
私の舌と絡み合う
先程のとは全然違う
深く濃厚なキス
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