第6章 11月7日/松田※
初めは諦めなかった
次は激突するトラックを
防げばいい。
トラックの事故を防ぐ為に
車で帰らず電車で帰る様に仕向けた。
だが何者かに線路に落とされ
電車に轢かれ即死
何度も何度も繰り返し
何度も何度も彼を守ろうとした
結末は同じだった…
世界は彼を殺そうとしている
手首の数字は60…50…40…30と
ループを繰り返す毎に減っていった
『…もう、疲れたよ…っ…先輩』
私は初めて無断欠勤をした
家に閉じ篭って
ただただぼーっと過ごした
携帯の電源を切り
窓もカーテンも締め切って
世界から自分自身を
遮断させたかった
何もする気が起きなくて
無気力なまま11月5日の夜になった
私の考えとは裏腹に
家のチャイムが鳴り響き
強制的に現実世界へと
引き戻された
ふらふらと玄関まで行き
ドアを開けた
『…どちら様ですか…』
松「名前!」
松田先輩の声が私の名前を呼んだと同時に
ガバッと抱き寄せられた
松「この5日間何してたんだよ
電話にも出ねぇし、心配したんだぞ」
『ごめ…なさい…』
松「何があったか
ちゃんと話しを聞かせてもらうから
とりあえず上がるぞ」
松田先輩は靴を脱ぐと
私の手を引いてリビングへ向かう
そのままソファーに腰を下ろして
私を隣に座らせた
松田先輩は私の頭に手を伸ばし
そのまま髪を梳かす様に
頭を撫でた
松「ほら、話してみろ?
抱え込んでるモノを誰かに話すと
スッキリするもんだぜ?」
『…先輩…私…わたしっ…』
頭を撫でる手が優しくて
先輩の声が優しくて、涙が溢れた
松「ゆっくりでいい、聞いてやるから」
『…いっぱい、…がんばったのっ…』
松「うん」
『…がんばったけど、…だめだったのっ…』
松「お前は頑張ったんだ
偉いじゃねぇか」
『…でもっ…だめだったのっ…!
あきらめたのっ…!つかれたのっ!
わたしじゃっ…たすけられないの…っ…』
涙が止めどなく溢れた
胸の中に溜まっていた感情が
一気に外へ解き放たれて
壊れてしまいそうだった
それでも先輩の手は優しくて
だから余計に悲しくなった
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