第6章 11月7日/松田※
松「何があったんだ?
俺に話せるか?」
私は息を深く吸うと
大きく吐いた
『ただ…怖い夢を
見てしまっただけで…あの…』
松「どんな夢を見た?」
ごめんなさい、と謝ろうとした言葉を
遮られて質問をされ
一瞬、思考回路が途切れてしまう
そっと体が離れると
頭の上にぽんっと手のひらを置かれて
顔を覗き込まれた
松「俺に話せるか?」
『…はい…』
私はごくりと唾を飲み込んだ
『…松田先輩が…死ぬ夢を見たんです』
二、三秒の沈黙が流れた
松「ふっ…馬鹿か。俺は死なねぇよ
やらなきゃなんねー事があるからな」
やらなきゃいけない事…
松「俺は親友の仇を
討つまで死ぬ訳にはいかねぇの。
だから安心しろ、
俺は死なない。大丈夫だ」
親友の仇……萩原先輩
4年前に爆死した、松田先輩の親友。
松田先輩はずっと
あの爆弾犯を追っている
私はあの嫌な夢を思い出し
頭を横に振って
思考を断ち切った
松「ほら、顔洗って来い
可愛い顔が台無しだぜ?」
『す、すいません、先輩
先に仕事行ってて下さい!』
松「待っててやるから
早く支度しろ」
そう言いながら靴を脱いで
リビングの中へ入っていく
私は洗面所へ行き
鏡に映る酷い顔を見て驚いた
冷静さを取り戻し
深い溜息を吐いた。
『はぁ…最悪だ
こんな顔見られたとか…』
顔を洗って支度を済ませると
松田先輩がリビングの横にあるキッチンで
コーヒーを淹れてくれていた
松田先輩は何度か家に上がった事があり
置いてある場所も覚えていたんだろう
私は壁に掛けてある
時計を見てハッとする
『松田先輩、コーヒーなんか
飲んでる場合じゃありませんよ!
遅刻です!遅刻!』
松「今から出ても間に合わねぇし
ゆっくり飲んでけ」
適当な事を言う彼に
私はたまには
サボってしまってもいいか、
という気持ちが勝ってしまった
それから松田先輩が腰掛けている
ソファーの横にゆっくりと腰を下ろした
.