第6章 11月7日/松田※
松田先輩はかっこよくて面倒見が良くて
意地悪だけれど優しくて…
私はそんな彼にいつの間にか
惹き込まれていた
松「今度飯奢ってやるから
仕事、頑張れよ」
『やった!頑張ります』
そう言い別れたのが、最後だった。
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杯戸ショッピングモール屋上
『……なん…で…』
大観覧車
真っ黒な煙を上げている
72番のゴンドラ
大きな鉄の塊を飲み込んだ様な
胸の痛さ…苦しさ
先輩が…松田先輩が…
視覚から得た情報が
上手く脳で処理出来ない
あのゴンドラの中に…松田先輩が…
目が焼かれる様な熱さ
鼻の奥をつんとした刺激が走る
嫌だ…そんなの…
脳が状況を理解した瞬間
ストッパーが外れたかの様に
涙が溢れ出した
『ぁ…っ…なんで…っ…
約束…したのにっ……いやぁあああ!!』
叫んだ
喉を引き裂く様に叫んだ
地面に膝をついて
ぐしゃぐしゃになるまで
遠くの方で仲間の声が聞こえる
飛び交う指示。
真っ白になった頭の中で
ぼんやりと浮き彫りになっている
犯人が次の爆弾を仕掛けた場所
米花中央病院
行かなくちゃ…
爆弾を止めなくちゃ…
松田先輩を…殺した犯人を
捕まえなくちゃ…
私の意識はそこで途絶えてしまった
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耳を刺すような
アラーム音でゆっくりと意識が覚醒する
視界に入るのは
いつもと変わらない自分の家の寝室
嫌な夢を見たような気がする
何があったんだっけ…
ゆっくりと思考回路を
過去へと巻き戻した
『…まつ…だ…せんぱい…』
慌てて携帯の画面を開いた
『え、なんで…』
待ち受け画面の上に
表示されている日付を見て
息を飲む
『…11月1日…』
着信履歴のボタンを押して
"松田先輩"と表示されているボタンを押した
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