第5章 Blood/赤井※
ぬるりと生暖かい舌が
私のの首筋を舐め上げた
『んっ…あかい、さんっ…』
赤「このままここに
噛み付いてしまいたい…」
先程までの声色とは違う
甘ったるい囁きが
耳の奥まで響く
両手で赤井さんの胸板を
強く押せば
首筋から顔が離れていく
赤井さんの顔を見れば
瞳の色が赤に変色していた
『あかいさんっ…』
その赤い瞳は苦しそうな、
悲しそうな色をしていた
『血を…飲まないと…
苦しいですか…?』
赤「すまない…っ」
質問の返事を返してくれず
謝罪の言葉を口にした赤井さんの唇は
直後、私の唇に押し当てられた
唇の隙間を割って
舌が滑り込む
思わず目を固く閉じた
『んんっ…っ…はっ…んっ…』
口の中で逃げ惑う舌を
絡みとられて
お互いの唾液が混ざり合う
吸血衝動を誤魔化しているような
口付けは荒々しくて
呼吸をする隙を
与えてくれる様子はなかった
苦しくて目の端から
涙を流しながら
赤井さんの胸板を叩いた
漸く唇を離してくれて
お互い乱れた呼吸を整える
『あ…かいさんっ…』
赤井さんは苦しそうに
顔を歪めていた
瞳の色は赤いまま。
赤「…悪かった…
少し…頭を冷やしてくる…」
そう言うと赤井さんは
私の上から退いて背を向けた
ゆっくりとベットから
立ち上がる赤井さんの手を
慌てて掴んだ
体を起こして
握った手を見つめた
私はまだ吸血鬼の事なんて
何も知らないし
赤井さんの事も何も知らない
だけど、今この場から
立ち去ろうとしてるのは
また私を噛んでしまうかも知れないと
私を思っての行動で…
赤井さんの優しさは
しっかりと感じ取っていた
だから、私は…
『…食べてもいいですよ』
赤井さんは私を殺さない
赤「馬鹿なことを言うんじゃない」
赤井さんは私を死なせたりしない
『私は大丈夫です…それよりも
赤井さんの苦しそうな顔を
見るの方が辛いです』
掴んだ赤井さんの手を引き寄せる
体勢を崩した赤井さんは
ベットに片膝をついていて、
私はそっと赤井さんの体を
抱きしめた
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