第1章 堕ちていくだけ/ジン※
シャワールームの鏡に映る自分は
自分じゃないみたいで
『酷い顔…』
鏡越しに映る白い湯気が
組織に始末されて
命を散らせていった奴らの顔に見えて…
静かに目を閉じる
次第に体が震えて
体を抱え込む様にしてしゃがみ込み
その場から動けないでいた
出しっ放しのシャワーの音と
体に当たるシャワーの感覚が
私を現実に引き留めていた
その時ガチャっとシャワールームの
扉が開く
ジ「様子が可笑しいから
見に来てみりゃあ、なんて様だ」
ジンがシャワーを止め
頭からバスタオルを被せてくれる
『ジン、さっきから寒いの…温めて』
膝を抱えて床のタイルを眺めながら
言葉を零すと腕を掴まれて
立たされる
ふわりと体が宙に浮き
ジンに担がれている事を理解する
どさっと荒々しくベッドに降ろされ
濡れた体の水分をシーツが吸収する
私を組み敷くジン
私の体はジンしか知らない。
それもその筈、
小さい頃に組織に拾われ
ここで育った私は
大人になる過程でジンと
何度か体を重ねた
虚ろな目でジンを見上げ
垂れ下がる銀の髪に手を伸ばした
頬に触れて口を開く
『…キスして』
そんな事今まで
口にした事も無かった
ジ「ハッ…本当にどうしちまったんだ?
熱でもあるんじゃねぇか?」
ジンは額と額をくっ付け
私の体温を測った
ジ「熱はねぇみてぇだが…」
『体調不良とかそんなんじゃない…』
ただ人肌を感じると
少しだけでも生きてる心地がする
霧がかかった気持ちを
少しだけ忘れさせてくれる
ジンの首に腕を回して
キスを強請った
ジ「…嫌いじゃねぇが
何か思う事があれば言え」
『何でもない…いいから
早く、キスして…』
忘れたい何もかも
解放されたい…?
いいや、解放されても
私はどこにも羽ばたけやしない
カゴの中の鳥
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