第11章 俺の記憶
「かっちゃん、大丈夫?」
目を覚ますと、デクが心配そうな顔で居た。なぜか、涙が零れた。
「えっ?かっちゃん、どうしたの?」
こんなデクを作っちまったのは全部俺のせいなんだ。
「ごめん……デク、ごめん……」
全てを察してくれたのか、デクは俺の手を握る。
「思い出しちゃったんだね。やっぱり、かっちゃんらしくなかったんだよな。ムカつくけど、普通のかっちゃんの方が良いな」
「そんな俺のせいで、ヴィランになったクセに……」
「そうだけど、あのかっちゃんは違和感だらけで気持ち悪かったよ。かっちゃんが笑顔って、地獄絵図じゃん」
そう言われてみれば、俺が笑顔ってヤバいことかもしれねぇ。
「出久、ごめんな」
「なんかかっちゃんらしくないなぁ。まぁいいか」
出久は俺の頭を撫でて、立ち上がった。
「ほら、みんなが君を心配しているよ」
俺は出久に付いて行った。
「勝己、記憶が戻ったんだな」
この半分野郎も居たんだった。
「いや、普通の人間になったんじゃねぇか?」
「あの間くらいの人間がちょうど良いかもしれねぇな」
俺は焦凍と二人で笑い合った。
『良かった。勝己君、記憶が戻って。笑顔の勝己君、変だもん。今も変だったけど』
「黙れ、クソ女」
『酷い!』
今更ヒーローなんて無理だろ。大切な人間と一緒に居たい。
「俺はヴィランになるぜ」
「そっか。ありがとう、かっちゃん」
出久は満面の笑みを俺に向けてくれた。