第1章 笑顔が美しい君
僕は拘束された脳無が乗った巨大冷蔵庫をロープで必死に引っ張っていた。しかし、動きはしない。
「ぐっ……」
「緑谷、頑張らねぇと玲奈なんて守れねぇぞ」
死柄木の声が聞こえて、必死に引っ張った。
辛い……。
でも、大好きな彼女を守るには、これしかないんだ。
彼女の笑顔を思い出して、汗を流しながら引っ張った。
トラックのところまで引っ張ると、目の前に黒霧が現れ、中から玲奈が出てきた。
「出久君、お疲れ!黒霧と作った塩漬けレモンだよ!」
彼女は弁当箱に入っているレモンを取り出した。
「出久君、お口開けて」
「えっ!」
彼女は僕の口にレモンが入れられた。
美味しい……。
「頑張ってね!」
彼女はニコッと笑った。自然と疲れが吹っ飛んだ。
「うん!」
そんな彼女に、僕は大きく返事をした。
すると、黒霧がわざとらしく咳込む。
「幸せなところ悪いですが、緑谷君には先生が決めたこのプランに従ってもらいます」
「先生……?」
「玲奈さんのお父様です」
彼女のお父さんはこの敵連合では先生と呼ばれているのか。
黒霧は僕に束ねられた用紙を渡された。
「こちらがそのプランです。中を読む限りハードです」
食事や生活までみっちりと書いてある。
だけど、彼女を守るならこれくらいは出来なきゃダメだ。