第1章 笑顔が美しい君
「可愛い可愛い愛娘が男の子を連れて来るなんて、なんか寂しいけど嬉しいな」
テレビの中で笑い声が聞こえた。僕は固唾を飲んだ。
「弔、この子を鍛えてほしい。僕の娘を守れるくらいにね」
「はぁ?ふざけんな」
「この子には素晴らしいものをプレゼントしようと思うからさ」
中の声はとても嬉しそうに聞こえた。
顔を会わせられないからこそ、画面越しで愛を伝えているのだろう。良いお父さんだと思った。
「黒霧、コイツを鍛えさせろ」
「死柄木、ご自分ではやられないのですか?」
「やるわけねぇだろ」
黒霧という煙みたいな男は嘆息を吐き、自分の体を大きく広げた。
そして、僕らは吸い込まれて行った。
気が付くと、ゴミで覆われた海浜公園だった。
「黒霧、何で海浜公園なんだよ」
「元はヒーロー志望という感じが見るからに出ていたので、緑谷君には清掃をやらせようと」
僕がヒーロー志望ということが見抜かれていたのか。
「大きなゴミが多いこの場所なら人目に付かず、力を鍛えることが出来るはずです」
「そうか。確かにここなら人目に付かず、トレーニングは出来るし、大きなゴミが多いから体の色んなところが鍛えられる。でも、本当にそれで良いのか……」
考えていると、肩を叩かれた。振り向くと、玲奈だった。
「出久君すごいね。ファイト!」
君の笑顔はとても眩しくて、目が眩むほどだ。
「うん!」
僕は大きく頷き、最高の笑顔を見せてみた。